シリーズ医師の年収と未来:「神経内科医」編

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神経内科医師の現状(厚労省医師数調査から)

神経内科医が急増、10年で3割強アップ

厚生労働省の調査によると、2014年の神経内科医の人数は4,657人で、40ある診療科の中で19番目に多い数でした。ほぼ中間に位置する「多くも少なくもない診療科」といえるのですが、特筆すべきはその増え方です。

2004年の神経内科医の人数は3,458人でしたので、この10年間で1,199人増、34.7%もアップしたのです。医師全体が2004年の256,668人から2014年の296,845人へと15.7%しか増えていないので「3割強アップ」は急増といってもいいでしょう。

医師数 2004年(多い順) 2014年(多い順) 増加数(率)
神経内科医 3,458人(16/32位) 4,657人(19/40位) 1,199人(34.7%)
医師全体 256,668人 296,845人 40,177人(15.7%)

脳血管疾患は減っているのになぜ?

神経内科医は急増しているのですが、神経内科領域の病気である脳梗塞などの脳血管疾患は減少傾向にあります。脳梗塞の年間死亡者数は、2011年から2015年までの4年間でおよそ1割強減り、脳血管疾患の患者数は2011年から2014年までに4.5%減っています。

患者が減っているのに、なぜ神経内科医が増えているのでしょうか。つまり、需要が減っているのに、なぜ供給量が増えているのでしょうか。

脳梗塞の年間死亡者数 2011年 2015年 8,750人減
11.9%減
7万3273人 6万4523人
脳血管疾患の総患者数 2011年 2015年 5万6,000人減
4.5%減
123万5000人 117万9000人

医学の進歩が脳梗塞の脅威を減らした

脳血管疾患と神経内科医数の関係は、単純な需要と供給の関係では説明できないことが分かります。次の数字は、脳血管疾患の治療にかかる医療費の推移です。

脳血管疾患の年間医療費 2011年 2014年 2,308億円増
14.9%減
1兆5513億円 1兆7821億円

2011年度に1兆5513億円だった脳血管疾患の年間医療費は、2014年度までの3年間に約15%も増えているのです。つまり、医者が増え、手厚い治療を行ったことで、脳血管疾患という脅威が減ったことになります。

日本成人病予防協会は、脳血管疾患の改善傾向は「医学技術の進歩」であると述べていますが、それは数字の上でも証明されているのです。「脳神経領域の医師の勝利」と言ってもいいでしょう。

神経内科医の「高齢化」は速い

ある領域の医師が増えた結果、その領域の重大な病気が改善することは喜ばしいことですが、神経内科の場合、手放しで喜べない事情もあります。それは神経内科医の「高齢化」のスピードが速いことです。

神経内科医の平均年齢は、2004年は42.1歳で32科中7位と「かなり若い」医師たちでしたが、2014年には45.4歳、40科中17位と「やや若い」医師になりました。
この10年間で3.3歳高齢化したわけですが、医師全体が同期間に1.5歳しか上がっていないことと比較すると速さが際立ちます。

平均年齢 2004年(若さ順) 2014年(若さ順)
神経内科医 42.1歳(7位/32) 45.4歳(17位/40) 3.3歳
医師全体 47.8歳 49.3歳 1.5歳

そして、医師数が急増しているのに平均年齢が上がっているということは、

  • 神経内科医を志望する新人医師が少ない
  • ベテラン医師が転科して神経内科医になる

という2つの傾向があると予測できます。

神経内科への道は後輩医師にお薦めしない(?)

残念なニュースはもうひとつあります。

医療ニュースを扱うサイトが2015年に、医師1600人に対し「後輩に薦めたい診療科は?」というアンケートを行ったところ、脳神経系では、脳神経外科がかろうじて16位に入ったのですが、神経内科はランクインできませんでした。

ちなみに「後輩に薦めたい診療科」のベスト5は、次の通りです。

1位:内科
2位:総合診療科
3位:整形外科
4位:外科
5位リハビリテーション科

もちろん、このアンケート結果をもって「現役医師の神経内科の評価が低い」とはいえません。というより、このアンケート自体、診療科のバリューを測る目的で行われていません。

例えば、「後輩に内科を薦める」と答えた医師は、「なぜ内科を後輩に薦めるのか」という問いに対し、「開業向け」や「需要が増える」などと回答しています。経済面を重視していることがうかがえます。

また、「新しい薬剤がどんどん出てくるので、外科系診療科より内科診療科の方が良い」という回答もありました。つまり、「神経内科など内科系の代表としての内科」を後輩に薦める医師がいたことも分かります。

麻酔科医の求人票ひろい読み

2000万円の大台は比較的容易、都市部でも好条件

医師求人サイトの「リクルートドクターズキャリア」には、神経内科医の求人が436件掲載されています(2017年4月時点)。これは「かなり求人数が多い診療科」といえます。

神経内科医求人の特徴はずばり「年収が高い」ことです。

地方なら1000万円超はとても簡単です。北海道の東の端にある釧路市では最高2500万円が期待できます。

では都心部で低いかというとそうでもなく、東京都千代田区のクリニックでは、なんと下限が1800万円で「破格」といってもいいでしょう。ただ、訪問診療なのでフットワークの軽さが求められます。

いずれにしましても、専門医の資格をお持ちであれば、高年収を確保しやすい診療科であることは間違いありません。

地域
病院or診療所
年収 業務内容 当直 勤務
北海道旭川市
病院
1200万~ 1600万円 外来、病棟 あり 週5日勤務
北海道釧路市
病院
850万~ 2500万円 外来、病棟 あり 週4~5日勤務
東京都千代田区
診療所
1800万~ 2000万円 訪問診療 なし 週3~5日勤務
横浜市泉区
病院
1200万~ 1500万円 外来、病棟経験6年以上の専門医歓迎 あり 週4~5日勤務
沖縄県那覇市
病院
1200万~ 2000万円 外来、病棟経験6年以上の専門医歓迎 あり 週5日勤務

脳神経領域におけるiPS細胞研究のいま

慶応大学は脊損治療に応用

国内医学界の大きな話題のひとつにiPS細胞研究があります。他人の細胞から作ったiPS細胞で網膜を作り、滲出型加齢黄斑変性の患者に移植したニュースは記憶に新しいと思います。

iPS細胞による再生医療は、脳神経領域でも注目を集めています。慶応大学は2018年から、iPS細胞を使った脊髄損傷に対する臨床研究を開始します。

交通事故やスポーツ事故などで傷ついた脊髄損傷は、有効な治療法がないとされてきましたが、慶応大学では20年前からこの分野の基礎研究に取り組んできました。そこにiPS細胞が現れ、基礎研究から臨床研究へとステージが上がったのです。

慶応大学が目指すのは、iPS細胞を神経のもとになる細胞に育て、損傷した脊髄に移植し、手足を動かせるようにすることです。

京大は難病パーキンソン病に挑む

iPS細胞の生みの親である山中伸弥教授の京都大学は、パーキンソン病を発症した患者の脳にiPS細胞由来の細胞を注射して、症状が改善するかどうかをみます。
具体的には、拒絶反応が起きにくい人の血液からiPS細胞を作り、それをもとに神経前駆細胞を作り、パーキンソン病患者に移植します。

患者ではない第3者の細胞を使うことのメリットは「ストックができること」です。患者自身の細胞からiPS細胞を作る場合、患者が現れてから作業を始めることになりますが、第3者の細胞を使えれば「作り置き」ができるのです。

この移植では100万個単位の細胞が使われるため、iPS細胞による再生医療は「異次元」の領域に入ります。

治療期間が短くなり、治療費も数百万円まで抑えることができるとのことです。「パーキンソン病治療用のiPS神経細胞」は、大日本住友製薬が製品化する方向で進んでいます。

「パーキンソン病って昔は治せない病気だったらしいね」と言われる時代が、すぐそこまできているのかもしれません。


参考資料

厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

厚生労働省「診療科別にみた医師数」2004年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/index.html

「生活習慣病の調査、脳梗塞」(日本生活習慣病予防協会)
http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/cerebral-infarction/

「脳卒中治療ガイドライン」(日本脳卒中学会)
http://www.jsts.gr.jp/guideline/046_047.pdf

「神経内科とは」(医療法人財団松圓会東葛クリニック病院)
http://www.tokatsu-clinic.jp/info/neurology.html

「脳血管疾患とは」(日本成人病予防協会)
http://www.japa.org/?page_id=6310

「医師1600人の『後輩に薦めたい診療科』」(m3.com)
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/406428/

リクルートドクターズキャリア
https://www.recruit-dc.co.jp/jokin/search/

「他人のiPS細胞で網膜移植」(産経ニュース2017 年3月)
http://www.sankei.com/life/news/170328/lif1703280037-n1.html

「iPSで神経再生に挑む 慶大、脊髄損傷治療で臨床へ」(日本経済新聞2017年2月)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10H8Q_Q7A210C1CR8000/

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野村龍一

野村龍一

某医師紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。
当研究所が成績優秀コンサルタントを先生のご担当へとブッキング

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野村龍一

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