都道府県別医師年収 地方へいくほど年収は高い?

厚生労働省が行った調査の概要

都道府県別医師年収 地方へいくほど年収は高い?

■ 記事作成日 2016/7/6 ■ 最終更新日 2016/7/6

厚生労働省では毎年、「賃金構造基本統計調査」を行っており、現在、平成27年度分のデータが公表されています。このデータを元に、今回は都道府県別の医師の給与について考えてみたいと思います。この調査は、毎年7月頃に行われ、翌年の2月頃に公表されます。現在の最新データは、平成27年のもので

 

  • 平成27年6月の月額の給与
  • 賞与、期末手当等特別給与額については平成26年1年間の合計

 

が示されています。調査の範囲は全国、調査対象となった産業は、「日本標準産業分類(平成25年10月改定)」に基づいています。また、今回公表された内容は、調査対象として抽出された「10人以上の常用労働者を雇用する民間の65,747事業所のうち、有効回答を得た50,785事業所」でのデータを集計したものです。


日本全国でみた「給与」の実態

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平成27年の調査では、男女の賃金格差が過去最小となった前年と同水準の72.2となりました(男性=100とした場合)。

 

男性だけの賃金でみると、大企業(常用労働者1,000 人以上)は387,700 円(前年比1.5%増)、 中企業(常用労働者100〜999人)は320,300円(同2.6%増)、小企業(常用労働者10〜99 人)は288,500 円(同0.9%増)でした。

 

女性は、大企業268,400 円(同1.2%増)、中企業240,400 円(同2.8%増)、 小企業216,400 円(同0.8%増)となっています。

 

また、雇用形態別の格差も小さくなっています。短時間労働者の賃金(1時間あたりの賃金)も、過去最高となっており、日本は全国的な規模でみれば、給与そのものが高くなる傾向が続いているようです。

 

ただし、産業別にみると、状況は変わってきます。産業別では、男性は金融・保険業がもっとも賃金が高く(50歳代前半にピークがある)、次に教育・学習支援業(50歳代後半にピーク)、医療、福祉(50歳代後半にピーク)となっています

 

女性は、教育・学習支援業(60歳代前半にピーク)が1位、次いで金融・保険業(60歳代後半にピーク)、医療、福祉(50歳代前半にピーク)となっています。いずれにしても、賃金カーブ(年齢や階級とともに変化する賃金の状況をグラフで表したもの)でみると、男性よりも女性の方が、そのカーブは緩やかになる(賃金格差が小さくなる)傾向があるようです。


医師の賃金を見てみると

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では、この調査結果より、都道府県別の医師の賃金についてみてみましょう。今回は、次のような計算方法でグラフ化してみました(上図参照)。

 

  • 調査結果より、「職種・性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のデータを参照
  • 年収の推計値として、「2015年6月の給与×12カ月分+2014年の特別給与額」を用いた
  • 各都道府県ごとに、年収の推計値 × 男性(女性)の人数 で、その都道府県での合計金額を算出
  • これを、都道府県ごとの男女の合計人数で割り、医師給与平均額を算出

 

結果として、年収の推計値が最も高かったのは岩手県でした。逆に、最も低かったのは大阪府です。

 

  • トップ3は、岩手県(およそ1,851万円)、鹿児島県(およそ1,750万円)、長野県(およそ1,635万円)
  • ワースト3は、大阪府(およそ816万円)、山形県(およそ821万円)、福岡県(およそ892万円)

 

都道府県ごとの医師数がもっとも多い東京都はワースト5位で、およそ902万円です。人口10万対医師数が全国でもっとも少ない埼玉県は10位(およそ1,475万円)、人口10万対医師数が全国4位でも医療機能の地域較差の大きい高知県は4位(1,615万円)でした。全体的には、医師不足が深刻な地域ほど年収の推計値が高く、都市部ではいずれも低い傾向があるようです。

 

給与の数値だけに惑わされないために

 

ただし、この調査結果には、少し気を付けてみるべき部分もあります。

 

例えば、医師の推計年収トップの岩手県は、医師の平均年齢が56.1歳、調査対象の労働者数は6名しかいませんでした(女性医師はゼロ)。一方で、ワースト1の大阪府は、医師の平均年齢が35.1歳、調査対象の労働者数は1,818名です(男性医師:1,350名、女性医師:468名)。元々の母数の規模や、年齢層に大きな開きがあるため、今回のような結果になったと考えられます。

 

また、今回の調査対象は、「10人以上の常用労働者を雇用する民間の65,747事業所のうち、有効回答を得た50,785事業所」です。岩手県には医師が6名しかいないはずはありません※1ので、多くの医師は、「民間の事業所(医療機関)」以外のところ(例えば市立病院など)に勤務しているとも考えられます。

 

さらに、ワースト2位の山形県は、調査対象の労働者数が32名(男性医師:13名、女性医師:19名)ですが、平均年齢は34.2歳(男性医師:36.9歳、女性医師:32.3歳)、勤続年数は男女合わせて1.9年(男性医師:1.2年、女性医師:2.4年)です。トップの岩手県と比較すると、平均年齢では20歳以上、勤続年数ではおよそ8年の開きがあります。

 

つまり、医師の出世度から考えると、山形県はやっと「中堅」といわれる年齢層、岩手県は部長クラスなどの「ベテラン医師」といわれる年齢層を対象として、調査が行われたことになります。これでは、給与の平均額に開きがあるのも、納得できますよね。

 

※1 厚生労働省が行っている「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によると、岩手県内の医療機関で働く医師数は、2,465名でした

 

医師は、働く場所に「地域のニーズ」が絡む職業

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医師の給与は、地域による傾向が違いますので、「働く場所(勤務地)」を選択するときの目安にはなります。しかし、医師という職業は、勤務地を選択するときにその地域の住民のニーズが絡むという、比較的珍しい特徴をもった職業です。ここが、医師の転職の難しさなのかもしれません。

 

例えば、一般会社員であれば「どんな仕事をしたいか」で、就職先(転職先)を選択することができます。IT関連の職業であれば、ネットワークを経由して仕事をすることもできますので、ある程度は「住む地域」を自由に選択できることもあります。

 

同じ医療者でも看護師の場合は、日本全国どこへ行っても看護師不足ですから、「どうしても高い専門性を生かしたい!」という場合を除けば、「住む地域」を選択した後で勤務先を探しても、遅くはありません。

 

さらに認定看護師や専門看護師などの有資格者の報酬と、これらの資格が無い看護師の報酬と比較しても、報酬そのものには大きな開きはありませんので、その地域の住民のニーズに左右されるほどの影響は少ないでしょう。

 

しかし医師の場合、「どこの地域の住民が、自分のウデや専門的なスキルを求めているか」が転職先の地域を選ぶ基準にもなります。

 

今回のような、医師へのニーズに対する報酬の違いを見ることもポイントにはなりますが、「その地域ではどのような背景やスキルを持った医師を求めているか」という情報もある程度調べておくと、より高額な報酬につながる可能性もありそうです。

 

参考資料

 

厚生労働省 平成27年賃金構造基本統計調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2015/index.html

 

同上 平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/

 

 

(文責・医師紹介会社研究所 所長 野村龍一)

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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厚生労働省の調査によると2014年の心臓血管外科医の人数は3,048人で、全40科中22位と、ほぼ中間に位置しています。循環器内科医が11,992人、9位ですので、循環器領域でも「内高外低」の傾向は顕著です。
脳神経外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の脳神経外科医の人数は7,147人で、全医師数296,845人に占める割合は2.4%でした。「少ない」と感じるかもしれませんが、40科中14番目に多い数です。
糖尿病内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の糖尿病内科医の人数は4,446人で、全40科中20位とちょうど中間に位置しています。糖尿病内科医が統計に登場したのは2008年からなのでこの年と比較すると、2014年までの6年間に1,492人増え、増加率は50.5%です。
呼吸器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の呼吸器外科医の人数は1,772人で、全40科中28位と「医師の数が少なめの診療科」といえます。一方で、呼吸器内科医の人数は5,555人、17位と、この分野でも「内高外低」の傾向は顕著でした。
乳腺外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の乳腺外科医の人数は1,622人で、全40科中30位と「医師が少なめの診療科」といえます。2008年の乳腺外科医の数は913人(31位)でしたので、2014年までの6年間で709人増、77.7%アップ、1.8倍になっています。
産婦人科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省は、産婦人科、婦人科、産科の3科に分けて統計を取っています。2014年の医師数と、全40科中の医師数ランキングでは、産婦人科医10,575人(10位)、婦人科医1,803人(27位)、産科医510人(35位)となっていて、圧倒的に「産科も婦人科もどちらも標榜する産婦人科医が多い」ことが分かります。
耳鼻咽喉科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の耳鼻咽喉科医の人数は9,211人でした。医師の多さランキングでは全40科中11位ですので「国内に多くいる医師」といえます。全医師296,845人に占める割合は3.1%でした。
肛門外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の肛門外科医の人数は432人でした。医師の多さランキングでは全40科中38位ですので「かなり少ない医師」といえます。全医師数296,845人に占める割合は0.15%にすぎません。
泌尿器科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の泌尿器科医の人数は6,837人で、全40科中15位と、「国内では比較的多い医者」という位置づけです。増加率をみると、2004年の6,032人から10年間で805人増え、増加率は13.3%でした。
放射線科医師の年収・収入・将来性と転職条件
医師専用求人サイト「リクルートドクターズキャリア」には、放射線科医の求人票が169件掲載されています(2016年12月現在)。この数字は「比較的求人数が多い診療科」といえます。
人工透析医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の統計には「人工透析医」という項目がないので、ここでは人工透析医療に携わることが多い「腎臓内科医」と「泌尿器科医」についてみてみます。
麻酔科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の麻酔科医の人数は8,625人でした。医師の多さランキングでは全40科中13位ですので「国内に多くいる医師」の部類に属します。全医師296,845人に占める割合は2.9%でした。
神経内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の神経内科医の人数は4,657人で、40ある診療科の中で19番目に多い数でした。ほぼ中間に位置する「多くも少なくもない診療科」といえるのですが、特筆すべきはその増え方です。
一般外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の一般外科医の人数は15,383人でした。医師の多さランキングでは全40科中4位で、全医師296,845人に占める割合は5.2%でした。
形成外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
形成外科医の人数が急増しています。厚生労働省の調査によると2014年の形成外科医の人数は2,377人で、医師数の多さランキングでは40科中25位と「少ない方の医師」なのですが、2004年には1,765人しかいませんでした。
血液内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の血液内科医の人数は2,534人でした。医師の多さランキングでは全40科中24位ですので「医師数が比較的少ない診療科」といえます。

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