短時間勤務で働く医師の実情は?

「短時間労働医師」の勤務時間と給与比較を行ってみた

短時間勤務で働く医師の実情は?

■ 記事作成日 2016/8/8 ■ 最終更新日 2016/8/8

医師として勤務するとき、多くの場合は正規職員として、規定時間内一杯(もしくはそれ以上)の時間で労働していることになると思いますが、中には「短時間労働者」として勤務する医師もいます。

 

今回も、厚生労働省が行っている、「賃金構造基本統計調査」の平成27年の結果データから、医師の「短時間労働者」の実態について、考えてみました。


厚生労働省が行った調査の概要

 

この調査は、毎年7月頃に行われ、翌年の2月頃に公表されます。現在の最新データは、平成27年のもので

 

  • 平成27年6月の月額の給与
  • 賞与、期末手当等特別給与額については平成26年1年間の合計

 

が示されています。ここまでは、前回の当コラムでもお伝えしています。

 

今回はこの中でも、「短時間労働者」について、その実態をみてみました。尚、厚生労働省では「短時間労働者」について、次のように定義しているようです。

 

同一事業所の一般労働者より1日の所定労働時間が短い、又は、1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者

 

「短時間労働者」である医師は、意外と多い??

 

では、この調査結果より、実際に「短時間労働者」である医師が全国にどれくらいいるのかを見てみます。

 

短時間勤務で働く医師の実情は?

図1 医療機関規模別 男女別での就業人数の比較

 

上記のグラフで「10人以上計」となっているのが、全国の10人以上の規模の事業所(医療機関)で働く人数です。男性医師は5.3万人、女性医師はおよそ1.7万人です。全国での合計人数とはいえ、意外と多いように思いませんか?

 

同じく厚生労働省が行っている「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」のデータを見ると、全国で働く医師の数は、およそ31万人です。このうち、男性医師はおよそ24.8万人、女性医師はおよそ6.4万人ですから、単純に計算すれば、男性医師のおよそ5人に1人、女性医師のおよそ4人に1人は、短時間労働として働いていることになってしまいます。

 

この2つの統計は、いずれも厚生労働省によるものではありますが、調査の対象に多少の差異がありますので(全国総数なのか、事業所(医療機関)規模によるのか、など)一概にはいえませんが、意外と「短時間労働」として働く医師が、多いのではないかと思います。

 

「短時間労働で働く医師」の給与とは

 

では、短時間労働をしている医師の給与の実態はどうでしょうか。

 

こちらも、「賃金構造基本統計調査」の平成27年の結果データから計算してみました。

 

【計算方法について】

 

●上記データのうち「医師」のデータのみ参照
●実労働日数 × 1日当たり所定内実労働時間数 × 1時間当たり所定内給与額

 

これを12か月分で年間所得(推計)とし、さらに「年間賞与その他特別給与額」を追加して、1年間の給与総額の推計値を計算した

 

短時間勤務で働く医師の実情は?

図2 医療機関規模別 男女別での年間所得額(推計)の比較

 

これはあくまでも推計値ではありますが、全国平均でみると、実は男性医師よりも、女性医師の方が、わずかながら高額になるようです。その理由は、事業所の規模によると考えられます。

 

事業所規模として「10〜99人」というのは、病床数20床未満の診療所や、病床数は20床以上でも比較的小規模な病院、あるいは訪問看護ステーションなど在宅医療を中心としたところではないかと推測できます。

 

こういった医療機関では、院長(あるいは責任者)が男性の場合は今回の「短時間労働者」には該当しませんが、例えば週に数日、あるいは数時間の短時間労働をしている女性医師が、かなり多いと予測できます。

 

このような医療機関では、必要医師の確保が困難であるために、時間単価を比較的高額に設定して、医師確保に努めているのではないでしょうか。

 

特に無床の診療所などでは、夜勤の必要性がありませんので、産休後や育休中の女性医師を、確保しやすくなるのかもしれません。

 

一方、男女の差額は小規模事業所よりも少し小さくなりますが、男女が逆転しているのが、1000人以上の大規模な事業所(病院など)です。

 

このような医療機関では、やはり夜勤(あるいは夜間のオンコール)がありますので、男性医師の方が勤務時間(拘束時間)が長くなるため、給与額もそれなりに高額になる、とも考えられるのですが、実際にはどうなのでしょうか。

 

労働時間と時間給との男女差を比較する

 

ではここで、事業所(医療機関)の規模別で、男女の医師の労働時間と時間給とを比較してみます。

 

短時間勤務で働く医師の実情は?

図3 医療機関規模別 男女別での1か月あたりの労働時間と時間給の比較

 

このグラフをみると、必ずしも「大病院は男性医師の方が勤務時間帯が長い」とは言い切れないことが分かります。そもそも、時間給に男女差があるようです。

 

また、この時間給の差と実際に勤務する時間との差で、全国的な平均値に差が出ている、ということです。さらに、男性医師よりも、女性医師の方が、実際の勤務時間が長いことが分かります。

 

興味深いのは、「事業所(医療機関)規模が100〜999人」の場合、1か月あたりの勤務時間は、男女ともに25時間程度であるという点です。さらに、もっとも短時間労働者として働く医師の実労働時間が長いのは、1000人以上のいわゆる大病院などです。

 

これらのデータからは、次のようなことが推測されます。

 

  1. 診療所〜小規模クラスの病院、在宅医療の支援事業所では、女性医師の短時間労働が多い
  2. 中規模クラスの病院では、女性医師による短時間労働は短めになるが、男性医師の場合はむしろ増える
  3. 大規模病院等では、短時間労働で働く医師もそれなりに長時間勤務となり、男性医師よりも女性医師の方が勤務日数が多くなる

 

特に3つ目に関しては、1日の労働時間は男女ともに6時間程度ですが、日数が違うようです。男性医師が1か月あたり9.7日なのに対し、女性医師は11.9日であり、2日以上多く勤務していることになります。

 

つまり、週に3日程度、決まった曜日で時短勤務で働いている女性医師が、多いのではないでしょうか。

 

一方の男性医師の方は、勤務日数は少なくなりますが、例えば夜勤手当などが付加されることで、実際の時間級の額が、高くなる可能性もあります。

 

さらに、医療機関規模が大きくなるほど、時間給の額が安くなる点にも、注目すべき点かと思います。

 

勤務先+実労働時間を見極めて短時間労働すべき

 

短時間勤務で働く医師の実情は?

 

現在は、一般企業等での労働者でも、短時間労働者が増えているようです。正社員としての登用だけではなく、派遣として働く人、産後・育児中の時短勤務など、様々な働き方があります。

 

医師の勤務といえば、数十年前なら「気づいたら季節が変わっていた」こともよくあることだったかもしれませんが、ここ数年は様々な働き方が選べるようになってきたと思います。

 

「どのようなところで働くか」という点も重要ですが、「どれくらいの時間働くか」という点も考慮しながら、勤務先を選ぶことも、可能なのではないでしょうか。

 

 

参考資料

 

厚生労働省 平成27年賃金構造基本統計調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2015/index.html

 

同上 平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/

 

同上 第61回労働政策審議会雇用均等分科会資料 パートタイム労働の現状
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/s0720-3d.html

 

 

(文責・医師紹介会社研究所 所長 野村龍一)

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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肛門外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の肛門外科医の人数は432人でした。医師の多さランキングでは全40科中38位ですので「かなり少ない医師」といえます。全医師数296,845人に占める割合は0.15%にすぎません。
泌尿器科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の泌尿器科医の人数は6,837人で、全40科中15位と、「国内では比較的多い医者」という位置づけです。増加率をみると、2004年の6,032人から10年間で805人増え、増加率は13.3%でした。
放射線科医師の年収・収入・将来性と転職条件
医師専用求人サイト「リクルートドクターズキャリア」には、放射線科医の求人票が169件掲載されています(2016年12月現在)。この数字は「比較的求人数が多い診療科」といえます。
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麻酔科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の麻酔科医の人数は8,625人でした。医師の多さランキングでは全40科中13位ですので「国内に多くいる医師」の部類に属します。全医師296,845人に占める割合は2.9%でした。
神経内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の神経内科医の人数は4,657人で、40ある診療科の中で19番目に多い数でした。ほぼ中間に位置する「多くも少なくもない診療科」といえるのですが、特筆すべきはその増え方です。
一般外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の一般外科医の人数は15,383人でした。医師の多さランキングでは全40科中4位で、全医師296,845人に占める割合は5.2%でした。
形成外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
形成外科医の人数が急増しています。厚生労働省の調査によると2014年の形成外科医の人数は2,377人で、医師数の多さランキングでは40科中25位と「少ない方の医師」なのですが、2004年には1,765人しかいませんでした。
血液内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の血液内科医の人数は2,534人でした。医師の多さランキングでは全40科中24位ですので「医師数が比較的少ない診療科」といえます。

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