肛門外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

肛門外科医の現状(厚労省医師数調査から)

■ 記事作成日 2016/12/17 ■ 最終更新日 2016/12/17

医師数が少ない診療科のひとつ、人気回復の兆しは見えず

 

※肛門治療の診療科名には「肛門科」と「肛門外科」がありますが、この記事では厚生労働省の統計で用いられている「肛門外科」を使用します。

 

厚生労働省の調査によると2014年の肛門外科医の人数は432人でした。医師の多さランキングでは全40科中38位ですので「かなり少ない医師」といえます。全医師数296,845人に占める割合は0.15%にすぎません。

 

増加率をみても、2004年から2014年までの10年間で39人増、9.9%アップです。一方、医師全体は同期間で40,177人増、15.7%アップですので、肛門外科人気は回復の兆しがみえないといえるかもしれません。

 

医師数 2004年(32科中順位) 2014年(40科中順位) 増加数(率)
肛門外科医 393人(28位/32) 432人(38位/40) 39人(9.9%)
全医師合計 256,668人 296,845人 40,177人(15.7%)

 

「最も平均年齢が高い診療科」は高齢化スピードも速い

 

2014年の肛門外科医の平均年齢は57.6歳で、診療科別の平均年齢若さランキングで40科中40位、つまり「最も高齢の科」でした。57.6歳は、医師全体の平均年齢49.3歳を8.3歳も上回ります。

 

平均年齢の高さより大きな衝撃は、高齢化のスピードではないでしょうか。

 

肛門外科医の平均年齢は、2004年から2014年の10年間で3.9歳上昇しています。医師全体では同期間に1.5歳しか上がっていないので、これをはるかに上回る速さなのです。

 

平均年齢 2004年(若さ順位) 2014年(若さ順位) 増減
肛門外科医 53.7歳(30位/32) 57.6歳(40位/40) 3.9歳
全医師 47.8歳 49.3歳 1.5歳

 

開業しやすい診療科、独立マインドも旺盛

 

2014年の数値では、診療所に勤務する肛門外科医の人数は268人で、全肛門外科医の62.0%を占めました。

 

診療所医≒開業医と考えると、「肛門外科はかなり独立開業しやすい」といえるでしょう。同年の全医師に占める診療所医の割合は34.3%にすぎません。

 

また、医師全体のトレンドとしては「開業マインド」は低下傾向にあります。2004年から2014年までの10年間で、全医師に占める診療所医の割合は1.9ポイント減っています。

 

やがて到来する「余剰医師問題」や「クリニック倒産時代」を見据え、開業をためらう医師が増えているのでしょう。

 

そのような状況にあって、肛門外科医の「開業マインド」は旺盛で、診療所医の割合は10年間で5.0ポイントもアップしています。

 

肛門外科クリニックは「手術をしない痔の治療」や「大腸検査」を診療メニューに加えることで、大きな設備投資をせずに診療報酬を増やすことが可能です。

 

もちろんこれに外科ならではの手術という「武器」が加わるわけですから、やはり「開業しやすい診療科」なのです。

 

病院医・診療所医比 2004年 2014年 増減(増減率)
肛門外科医数 393人(100%) 432人(100%) -
うち病院医数 169人(43.0%) 164人(38.0%) 5.0ポイント減
うち診療所医数 224人(57.0%) 268人(62.0%) 5.0ポイント増

 

病院医・診療所医比 2004年 2014年 増減(増減率)
全医数 256,668人(100%) 296,845人(100%) -
うち病院医数 163,683人(63.8%) 194,961人(65.7%) 1.9ポイント増
うち診療所医数 92,985人(36.2%) 101,884人(34.3%) 1.9ポイント減

肛門外科医の求人票ひろい読み

肛門外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

手術件数をこなせれば2000万円台は楽々到達

 

医師求人サイトの「リクルートドクターズキャリア」には、「肛門外科・消化器外科・肝胆膵外科」の求人が209件掲載されています(2016年12月時点)。残念ながら「肛門外科」だけの件数は不明です。

 

「肛門外科・消化器外科・肝胆膵外科」の求人票の特徴は「年収の下限が高い」ことでしょう。札幌市西区の病院は下限が850万円となっていますが、このような1000万円を切るケースはまれです。

 

また、手術スキルを条件にする求人票は、2000万円超が当たり前です。比較的年収が低い東京23区内でも、例えば北区の病院は1200万〜2000万円を提示しています。

 

この求人票からは「手術補助でも1200万円」と読み取ることができ、「まずまずの水準」といえるのではないでしょうか。

 

「大腸」に強いとさらに報酬アップ

 

東京都足立区の病院の求人票をご覧ください。求めるスキルに「大腸肛門科オペ、内視鏡治療」を掲げています。ここまで明確に「求める医師像」を示している求人票は、他科ではあまりみかけません。

 

肛門外科のクリニックの特徴は、@痔の治療に特化、A痔と大腸の両方を治療、B女性患者に特化の3つに大別されることです。例えば内科系クリニックでは「内科・呼吸器内科・消化器内科」と、得意分野をぼやかす表示も珍しくありません。

 

これと異なり、肛門外科クリニックは、得意な治療を前面に打ち出して集患を図っているのです。

 

よって、病院への就職でも痔と大腸の治療という2つの「武器」を持っている医師は、採用条件の交渉を有利に運ぶことができるでしょう。

 

地域
病院or診療所

年収 業務内容 当直 勤務/休み

★東京都北区
病院

1200万〜

 2000万円

手術、手術補助、外来、病棟 月2〜3回 週4.5〜5.5日勤務

★東京都足立区
病院

1300万〜

 1800万円

大腸肛門科オペ、内視鏡治療、外来、病棟 月2〜4回 週4.5or5日勤務

★札幌市西区
病院

850万〜

 2500万円
(10年目1450万円)

専門医不問、外来、病棟 月3〜4回 週4〜5日勤務

年120日休

大阪府寝屋川市
病院

1300万〜

 2000万円

手術、手術補助、外来、病棟 月3〜5回 週5日勤務

年110日休

佐賀県鳥栖市
病院

1500万〜

 2200万円

手術、手術補助、外来、病棟 月2〜4回 週4.5日勤務

いぼ痔治療トップレベル3病院

 

手術件数を公開しているサイト「caloo」によると、2014年3月からの1年間に国内で行われたいぼ痔の治療件数は16,803件で、内訳は「手術14,546件」「手術なし2,257件」でした。

 

いぼ痔治療件数トップの病院は「松田病院」(静岡県浜松市)で、2位「チクバ外科・胃腸科・肛門科病院」(岡山県倉敷市)、3位「大腸肛門病センター高野病院」(熊本市中央区)と続きます。

 

「国内有数の実績を叩き出している病院」には、集患の「極意」があるはずです。3病院の特徴をみてみましょう。

 

肛門疾患手術を年1400件行う松田病院

 

引用:http://www.matsuda-hp.or.jp/index.php

 

いぼ痔治療トップの松田病院(静岡県浜松市)は、肛門疾患手術の件数が年1400件にも及びます。同院の「売り」は治療の低侵襲化です。

 

痔核に対する注射療法を用いて、日帰りや短期入院を実現しています。治療の短期化のメリットとして挙げているのが、結果の良さと社会復帰の早さ、そして安価であることです。

 

患者にとって最も気になる問題なのに、なかなか医師に伝えられないのが治療費への懸念です。しかし松田病院では、松田保秀理事長・院長自ら低侵襲治療の「価格メリット」をPRしているので、患者も安心でしょう。

 

もちろん、同院の強みは「医療」です。大腸がん切除の「粘膜下層剥離術(ESD)」は、静岡県内で最初に先進医療としての導入が許可されました。

 

便漏れ治療の「仙骨神経刺激療法」はいち早く2015年に施行して、マスコミが取材に訪れたほどです。

 

また、人工肛門と人工膀胱の患者とその家族で作る「松田会」を組織し、勉強会や旅行を企画しています。勉強会のテーマは「震災時のオストメイト」や「新装具について」など実用的な内容になっています。

 

驚異のスクリーニング件数で早期手術を行うチクバ外科・胃腸科・肛門科病院

 

引用:http://www.chikubageka.jp/

 

チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(岡山県倉敷市)の肛門手術件数は、年1200〜1300件に及びます。この実績もすごいのですが、注目したいのは胃・大腸内視鏡検査の件数が、年12,000〜15,000件にも及ぶことです。

 

1年間の月〜金の日数は約260日ですので、15,000件を260日で割ると、なんと1日57.7件の内視鏡検査を行っていることになります。

 

そのため、胃がんと大腸がんの内視鏡手術は年約700件、胃がんと大腸がんの開腹手術は年約150件と、これもすごい数字を叩き出しています。スクリーニングを強化して早期治療につなげようという病院の思いが、数字から伝わってきます。

 

また、平均在院日数を減らす努力も見事です。2011年から2014年までは減少傾向にありながら「6日の壁」を超えられませんでした。ところが、2015年にとうとう6日を割り込みました。医師と看護師の退院調整の努力の賜物でしょう。

 

大腸肛門病センター高野病院の「営業力」と「おもてなし力」

 

引用:http://www.takano-hospital.jp/

 

大腸肛門病センター高野病院(熊本市中央区)について紹介したいのは、「難治性肛門疾患パンフレット【医師向け】」です。肛門疾患の重症例や合併症、クローン病などを扱った、A4用紙8ページの資料で、同院のホームページからPDFをダウンロードできます。URLは「資料」に掲載しました。

 

【医師向け】とあるように、近隣の病院や診療所に地域医療連携を呼びかける目的で作られました。もはや病院にも「営業」が欠かせない時代です。こうしたツールは患者獲得の大きな力になるでしょう。

 

また、同院には大腸肛門疾患の女性患者専用の外来日「レディース・デイ」があります。

 

肛門外科の病院やクリニックが「女性患者だけの日」を設けるのは珍しくありませんが、高野病院は女性専用のロビーと診察室を用意しています。キッズルームも設置するといった気配りも忘れていません。

 

実績に加えて「おもてなし」の精神が患者をとらえて離さないのでしょう。

 

参考資料:

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2004年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/index.html

 

●リクルートドクターズキャリア
https://www.recruit-dc.co.jp/jokin/search/

 

●「病院別いぼ痔の治療実績」caloo
https://caloo.jp/dpc/disease/617

 

●「松田病院」(静岡県浜松市)
http://www.matsuda-hp.or.jp/index.php

 

●「チクバ外科・胃腸科・肛門科病院」(岡山県倉敷市)
http://www.chikubageka.jp/

 

●「大腸肛門病センター高野病院」(熊本市中央区)
http://www.takano-hospital.jp/

 

●「難治性肛門疾患治療のご案内」(大腸肛門病センター高野病院)
http://www.takano-hospital.jp/Image/pdffile/2014nanchi.pdf

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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循環器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年末時点の循環器内科医の人数は11,992人で、40科中9番目に多い数です。ただ、全医師に占める循環器内科医の割合は4.0%と「9位の割に占有率が低い」と感じるかもしれませんが、1位の一般内科医数が61,317人(20.7%)と、2位以下を大きく引き離しているからです。
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厚生労働省は診療科別の医師数を公表していて、データからは「その科の現状」がみえてきます。呼吸器内科医のいまをみてみましょう。
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厚生労働省の調査によると2014年の腎臓内科医の人数は3,929人でした。国内の医師総数は296,845人ですので腎臓内科医は1.3%となります。少ないように感じるかもしれませんが、40の診療科のうち21番目に多い数です。
消化器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の消化器外科医の人数は4,934人で、全40科中18位と、ほぼ中間に位置しています。消化器内科医は13,805人(7位)ですので、消化器でも「内高外低」が顕著です。
心臓血管外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の心臓血管外科医の人数は3,048人で、全40科中22位と、ほぼ中間に位置しています。循環器内科医が11,992人、9位ですので、循環器領域でも「内高外低」の傾向は顕著です。
脳神経外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の脳神経外科医の人数は7,147人で、全医師数296,845人に占める割合は2.4%でした。「少ない」と感じるかもしれませんが、40科中14番目に多い数です。
糖尿病内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の糖尿病内科医の人数は4,446人で、全40科中20位とちょうど中間に位置しています。糖尿病内科医が統計に登場したのは2008年からなのでこの年と比較すると、2014年までの6年間に1,492人増え、増加率は50.5%です。
呼吸器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の呼吸器外科医の人数は1,772人で、全40科中28位と「医師の数が少なめの診療科」といえます。一方で、呼吸器内科医の人数は5,555人、17位と、この分野でも「内高外低」の傾向は顕著でした。
乳腺外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の乳腺外科医の人数は1,622人で、全40科中30位と「医師が少なめの診療科」といえます。2008年の乳腺外科医の数は913人(31位)でしたので、2014年までの6年間で709人増、77.7%アップ、1.8倍になっています。
産婦人科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省は、産婦人科、婦人科、産科の3科に分けて統計を取っています。2014年の医師数と、全40科中の医師数ランキングでは、産婦人科医10,575人(10位)、婦人科医1,803人(27位)、産科医510人(35位)となっていて、圧倒的に「産科も婦人科もどちらも標榜する産婦人科医が多い」ことが分かります。
耳鼻咽喉科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の耳鼻咽喉科医の人数は9,211人でした。医師の多さランキングでは全40科中11位ですので「国内に多くいる医師」といえます。全医師296,845人に占める割合は3.1%でした。
泌尿器科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の泌尿器科医の人数は6,837人で、全40科中15位と、「国内では比較的多い医者」という位置づけです。増加率をみると、2004年の6,032人から10年間で805人増え、増加率は13.3%でした。
放射線科医師の年収・収入・将来性と転職条件
医師専用求人サイト「リクルートドクターズキャリア」には、放射線科医の求人票が169件掲載されています(2016年12月現在)。この数字は「比較的求人数が多い診療科」といえます。
人工透析医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の統計には「人工透析医」という項目がないので、ここでは人工透析医療に携わることが多い「腎臓内科医」と「泌尿器科医」についてみてみます。
麻酔科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の麻酔科医の人数は8,625人でした。医師の多さランキングでは全40科中13位ですので「国内に多くいる医師」の部類に属します。全医師296,845人に占める割合は2.9%でした。
神経内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の神経内科医の人数は4,657人で、40ある診療科の中で19番目に多い数でした。ほぼ中間に位置する「多くも少なくもない診療科」といえるのですが、特筆すべきはその増え方です。
一般外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の一般外科医の人数は15,383人でした。医師の多さランキングでは全40科中4位で、全医師296,845人に占める割合は5.2%でした。
形成外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
形成外科医の人数が急増しています。厚生労働省の調査によると2014年の形成外科医の人数は2,377人で、医師数の多さランキングでは40科中25位と「少ない方の医師」なのですが、2004年には1,765人しかいませんでした。
血液内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の血液内科医の人数は2,534人でした。医師の多さランキングでは全40科中24位ですので「医師数が比較的少ない診療科」といえます。

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