乳腺外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

乳腺外科医の現状(厚労省医師数調査が伝える事実)

乳腺外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

■ 記事作成日 2016/11/28 ■ 最終更新日 2016/11/28

6年間で1.8倍、1,622人

 

厚生労働省の調査によると、2014年の乳腺外科医の人数は1,622人で、全40科中30位と「医師が少なめの診療科」といえます。

 

2008年の乳腺外科医の数は913人(31位)でしたので、2014年までの6年間で709人増、77.7%アップ、1.8倍になっています。

 

全医師数は2008年の271,897人から2014年の296,845人へと、24,948人増、9.2%アップですので、乳腺外科医に急増ぶりは際立ちます。

 

医師数 2008年(多い順) 2014年(多い順) 増加
乳腺外科医 913人(31/40位) 1,622人(30/40位) 709人(77.7%、1.8倍)
医師全体 271,897人 296,845人 24,948人(9.2%)

 

一般外科の標榜変えが乳腺外科医急増の要因か?

 

乳腺外科医の2014年の平均年齢は46.7歳で、全医師の平均年齢49.3歳より2.6歳も若いです。ただ年齢の上昇率では、乳腺外科医は2008年には45.1歳でしたので、2014年までに1.6歳上昇しています。

 

一方、全医師は2008→2014年で1.0歳の上昇ですので「乳腺外科医の高齢化率は速め」といったところでしょう。

平均年齢 2008年(若さ順位) 2014年(若さ順位) 増加
乳腺外科医 45.1歳(19/40位 46.7歳(22/40位) 1.6歳
医師全体 48.3歳 49.3歳 1.0歳上昇

 

そうなるとひとつの疑問が湧きます。医師数が1.8倍に増えるほど人気診療科であるのに、なぜ平均年齢が下がらないのでしょうか。

 

そのひとつの答えは、「臨床研修医にはそれほど人気がある診療科ではない」ということになります。

 

2014年の臨床研修医の平均年齢は27.9歳と、断トツの若さ1位ですので、彼らが乳腺外科医を目指していたら、平均年齢は下がるはずです。

 

そうなっていないということは、「他科の医師が乳腺外科医に転身した」と推測できます。この推測を裏付けるように、一般外科医は2008年の16,865人から、2014年の15,383人へと1,482人(8.8%)も減っているのです。

 

一般外科医から乳腺外科医への転身、または標榜変えは少なくないのでしょう。

 

診療所医率17.6%は「開業のしやすい外科」といえそう

 

病院医と診療所医の比率を見ると、乳腺外科医は2014年は病院医が1,337人で82.4%、診療所医が285人で17.6%でした。

 

2008年では病院医82.9%、診療所医17.1%でしたので、ほぼ変わりありません。病院医の割合の多さでは、乳腺外科医は2014年、40科中19位でした。

 

次に視点を診療所医に移すと、2014年の診療所医の率は、全医師では34.3%でしたが、乳腺外科医は17.6%でした。

 

診療所医≒開業医とすると、これは「乳腺外科医は独立開業しやすいとはいえないが、決して開業しにくいとはいえない」と数字です。

 

他科の2014年の診療所医率は、腎臓内科医が13.8%、循環器内科医が15.7%ですので、「乳腺外科医は、特定の内科医より開業しやすい」といえるのです。

 

治療に手術を用いる乳腺外科の方が、慢性疾患患者が多い腎臓内科などより「開業しやすい」のは意外な印象を持ちます。

 

女性専用クリニックへの需要があるから

 

そこで乳腺外科クリニックの診療内容を調べてみると、ほとんどのクリニックは「手術をしていない」ことが分かります。エコーやマンモグラフィの検査や、組織学的検査などの検査が中心のようです。

 

もう少し「踏み込んだ治療」を行っているところでも化学療法とホルモン療法まで、といったところです。

 

つまり乳腺外科クリニックでは確定診断までを行い、乳癌が見付かったら大規模病院に紹介してそこで手術を行い、術後のケアは再び乳腺外科クリニックが受け持つ、という流れのようです。

 

「手術をしない外科クリニック」が存在できるのは、女性特有の病気を診ているからでしょう。乳癌検査は羞恥心を感じる内容になるので、「女性専用クリニック」への需要が一定程度存在するのでしょう。

 

乳腺外科クリニックは、ピンクや白を基調としたおしゃれな内装のところが多いのもそのためでしょう。

 

 

 

2008年

2014年

  病院医

(病院医率)

診療所医

(診療所医率)

病院医

(病院医率)

診療所医

(診療所医率)

乳腺外科医 757人

(82.9%)
40科中20位

156人

(17.1%)

1,337人

(82.4%)
40科中19位

285人

(17.6%)

全医師 174,266人

(64.1%)

97,631人

(35.9%)

194,961人

(65.7%)

101,884人

(34.3%)


乳腺外科医の求人票ひろい読み

乳腺外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

低額年収の提示が多い、2000万円の大台は難しそう

 

医師求人サイトの「リクルートドクターズキャリア」には、乳腺外科医の求人が72件掲載されています(2016年11月時点)。求人数は他科と比べると少なめです。

 

このサイトには年収で求人票を絞り込める機能があるのですが、「1800万円以上」と「2000万円以上」のヒット数はゼロ件でした。かろうじて「1600万円以上」で3件がヒットしました。

 

ですので、そのうちの1つである岡山県倉敷市の病院が提示する「1600万〜2000万円」が、乳腺外科医の勤務医の「年収の上限の目安」とみてよさそうです。

 

そのほかの求人票で気になったのは、札幌市の病院の「650万円〜」と大阪市の病院の「730万円〜」という、下限しか示さない年収表示です。しかもその下限額が安いのです。

 

当然のことながら「650万円〜」と「730万円〜」という表示が、「上限は実力によって青天井」を意味しているとは考えにくく、逆にこのような求人票は「上限がそれほど高くないから示せないのでは?」と疑われるでしょう。

 

さらに江東区の病院の求人票は「手術補助レベルは600万円から」「執刀医レベルは1350万円も可」と読み取れます。

 

病院側が厳しくスキル判断するであろうことがうかがえますし、高い手術スキルを持っていても2000万円にはるかに届かないことも分かります。

 

地域
病院or診療所

年収 業務内容 当直 勤務/休み

北海道札幌市
病院

650万円〜 未記載 未記載 週5日勤務+祝日休み

岩手県奥州市
病院

1300万〜

 2000万円

外来、病棟 あり、回数未記載 週4〜5日勤務、休日年120日

東京都葛飾区
病院

1200万円〜 手術、手術補助、外来、病棟 月3〜4回 週4〜5.5日勤務
東京都江東区

病院

600万〜

 1350万円

手術、手術補助、外来、病棟 あり、回数未記載 休日年120日
大阪市東淀川区

病院

730万円〜 外来、病棟、検査 月1〜2回 週4〜5日勤務
岡山県倉敷市

病院

岡山県倉敷市

病院

外来、病棟 月1〜2回 日、祝、土日午後休み、休日年117日

乳腺外科の最新トピックス

乳腺外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

女性専門医が多い乳腺外科医

 

乳腺外科分野を代表する学会は、一般社団法人日本乳癌学会といい、乳腺専門医の認定を行っています。

 

2014年の厚労省のデータでは、乳腺専門医の資格を持つ女性医師は235人で、全乳腺専門医1,169人の20.1%を占めました。この数字は「2割しか」ではなく「2割も」といえそうです。

 

この統計には56種類の専門医がノミネートされていて、乳腺専門医の女性比率は15番目に多いのです。

 

ちなみに女性医師比率高さランキングの最下位である56位は、消化器外科専門医で、女性医師率は1.9%「しか」ありませんでした。

 

再生医療の研究者とのコラボで乳癌細胞の転移メカニズムを解明

 

iPS細胞の開発で日本人の山中伸弥氏がノーベル医学・生理学賞を受賞して以来、国民の間に「再生医療というものが病気をなくしてくれるらしい」という認識が生まれました。

 

ところがその認識を持ちつつも「再生医療は私の病気には関係なさそう」と感じている人も多いでしょう。

 

しかし乳癌治療の分野で、再生医療が画期的な成果を出しました。京都大学が2016年11月、「乳癌細胞の転移を促進するメカニズムを解明した」と発表しました。

 

この研究を行ったのは、京都大学医学部「乳腺外科学」と京都大学再生医科学研究所の合同チームです。

 

乳癌細胞それ自体にも転移する能力が備わっていますが、「転写因子SALL4」という分子が関与すると、乳癌細胞の転移はさらに活性化されます。しかしSALL4がどのように関与しているかは分かっていませんでした。

 

そこで研究チームは、転移性の乳癌細胞を用いて、SALL4の発現と抑制の実験を行いました。その結果、1.SALL4が乳癌細胞の転移能力を高めていることと、2.integrin α6遺伝子とintegrin β1遺伝子が関与していること――の2点を解明しました。

 

転移能力が落ちている乳癌細胞にintegrin α6遺伝子とintegrin β1遺伝子を導入したところ、転移能力が向上したのです。

 

この研究結果によって、新しい乳癌マーカーの開発や、転移を抑制する新薬などへの応用が期待されます。

 

参考資料:

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2008年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/index.html

 

●リクルートドクターズキャリア
https://www.recruit-dc.co.jp/jokin/search/

 

●乳癌細胞転移促進の新メカニズム解明(2016年11月11日 QLifePro)
https://www.m3.com/open/clinical/news/article/475873/

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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消化器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の消化器外科医の人数は4,934人で、全40科中18位と、ほぼ中間に位置しています。消化器内科医は13,805人(7位)ですので、消化器でも「内高外低」が顕著です。
心臓血管外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の心臓血管外科医の人数は3,048人で、全40科中22位と、ほぼ中間に位置しています。循環器内科医が11,992人、9位ですので、循環器領域でも「内高外低」の傾向は顕著です。
脳神経外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の脳神経外科医の人数は7,147人で、全医師数296,845人に占める割合は2.4%でした。「少ない」と感じるかもしれませんが、40科中14番目に多い数です。
糖尿病内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の糖尿病内科医の人数は4,446人で、全40科中20位とちょうど中間に位置しています。糖尿病内科医が統計に登場したのは2008年からなのでこの年と比較すると、2014年までの6年間に1,492人増え、増加率は50.5%です。
呼吸器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の呼吸器外科医の人数は1,772人で、全40科中28位と「医師の数が少なめの診療科」といえます。一方で、呼吸器内科医の人数は5,555人、17位と、この分野でも「内高外低」の傾向は顕著でした。
産婦人科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省は、産婦人科、婦人科、産科の3科に分けて統計を取っています。2014年の医師数と、全40科中の医師数ランキングでは、産婦人科医10,575人(10位)、婦人科医1,803人(27位)、産科医510人(35位)となっていて、圧倒的に「産科も婦人科もどちらも標榜する産婦人科医が多い」ことが分かります。
耳鼻咽喉科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の耳鼻咽喉科医の人数は9,211人でした。医師の多さランキングでは全40科中11位ですので「国内に多くいる医師」といえます。全医師296,845人に占める割合は3.1%でした。
肛門外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の肛門外科医の人数は432人でした。医師の多さランキングでは全40科中38位ですので「かなり少ない医師」といえます。全医師数296,845人に占める割合は0.15%にすぎません。
泌尿器科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の泌尿器科医の人数は6,837人で、全40科中15位と、「国内では比較的多い医者」という位置づけです。増加率をみると、2004年の6,032人から10年間で805人増え、増加率は13.3%でした。
放射線科医師の年収・収入・将来性と転職条件
医師専用求人サイト「リクルートドクターズキャリア」には、放射線科医の求人票が169件掲載されています(2016年12月現在)。この数字は「比較的求人数が多い診療科」といえます。
人工透析医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の統計には「人工透析医」という項目がないので、ここでは人工透析医療に携わることが多い「腎臓内科医」と「泌尿器科医」についてみてみます。
麻酔科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の麻酔科医の人数は8,625人でした。医師の多さランキングでは全40科中13位ですので「国内に多くいる医師」の部類に属します。全医師296,845人に占める割合は2.9%でした。
神経内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると、2014年の神経内科医の人数は4,657人で、40ある診療科の中で19番目に多い数でした。ほぼ中間に位置する「多くも少なくもない診療科」といえるのですが、特筆すべきはその増え方です。
一般外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の一般外科医の人数は15,383人でした。医師の多さランキングでは全40科中4位で、全医師296,845人に占める割合は5.2%でした。
形成外科医師の年収・収入・将来性と転職条件
形成外科医の人数が急増しています。厚生労働省の調査によると2014年の形成外科医の人数は2,377人で、医師数の多さランキングでは40科中25位と「少ない方の医師」なのですが、2004年には1,765人しかいませんでした。
血液内科医師の年収・収入・将来性と転職条件
厚生労働省の調査によると2014年の血液内科医の人数は2,534人でした。医師の多さランキングでは全40科中24位ですので「医師数が比較的少ない診療科」といえます。

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