10日分処方されていたジアゼパム錠2mgを誤って30日分交付してしまう調剤過誤が発生。他の薬剤が30日分処方されていたので、ジアゼパム錠も当然30日分処方されていると思い込んでしまった。

■作成日 2018/2/22 ■更新日 2018/5/8

 

 

薬剤師ならば多かれ少なかれ経験したことがあるだろう調剤過誤。職業柄避けて通れない自らのミスから、医師の処方ミスまで要因は様々です。このコーナーでは、薬剤師の皆様が調剤過誤、そして調剤事故に少しでも遭遇しないよう、他の薬剤師さんが実際に経験した「調剤過誤にまつわるヒヤリ・ハット事例」を物語でご紹介しています。


 

私はドラッグストア併設の面薬局に勤務する30歳代の男性薬剤師です。
私の勤務している薬局には、私の他に薬剤師がもう1人います。

 

私も彼もこの薬局での勤務歴は3年ほどです。
薬局で受け付ける処方せんは1日に40~60枚程度です。患者さんはドラッグストアや近隣のスーパーマーケットで買い物をするついでに処方せんを持ってくる方が多く、昼近くや夕方は結構混み合います。

 

今回の調剤過誤は、夕方の結構忙しい時間に発生しました。

 

患者さんは30歳代の女性で、神経内科に通院中の方です。だいたい月に1回程度来局されるのですが、いつもうつむき加減であまり話をしてくれません。

 

処方内容は毎回ほとんど同じで、正直服薬指導がやりづらいという印象のある患者さんです。

 

この患者さんの処方せんを受け付け、他の薬剤師がピッキングした薬剤を私が監査している時に、ドラッグストアから呼び出しがかかりました。

 

もう1人の薬剤師が服薬指導中だったので、やむを得ず私は監査の途中でドラッグストアに向かいました。接客を終えて調剤室へ戻ると私は再度監査を行い、服薬指導の準備をしました。

 

しかしそこへ他の患者さんが処方せんを持ってきました。
簡単な内容の処方であったので私はピッキングを行い、他の薬剤師に監査をお願いして投薬台に向かいました。

 

ざっとみた感じ、処方内容はいつもと同じでした。
そこで患者さんには、薬の内容に変更はないこと・処方日数は30日分であること・向精神薬がいくつか処方されているので眠気に注意して眠気がある時は車の運転をしないこと・調子がいつもと違うようなら早めに受診することなど、いわば当たりさわりのない服薬指導を行ってお薬をお渡ししました。

 

服薬指導の間、患者さんはいつものように小さくうなづくだけで、特に何もお話はありませんでした。

 

そして患者さんに「お大事に」というのとほぼ同時に、小児の患者さんが立て続けに2組入ってきました。そのため、私の気持ちはすぐに小児の患者さんたちの方にうつってしまいました。

 

しかしいま思うと、どんなに処方せんが集中してもそれに動じず、眼の前にいる患者さんの処方をしっかり確認すべきでした


翌日に行った処方せんと調剤録の照合時に調剤過誤が判明 すぐに患者さんに連絡して謝罪

調剤過誤が発覚したのは、翌日でした。
事務職員が処方せんと調剤録の照合をしている時に判明したのです。

 

事務職員から「すみません。入力を間違えていました。ジアゼパム錠2mgが10日分の処方なのに他の薬剤と同じ30日分で入力してしまいました。」と報告がありました。

 

そこで入力の訂正後レセコンで理論在庫を確認し、実際の在庫を確認したところ、ジアゼパム錠2mgが20錠不足していることが判明しました。

 

もっとも、在庫を確認せずとも、私ももう1人の薬剤師もジアゼパム錠2mgを30錠で調剤・監査した記憶があったので、調剤過誤の発生は間違いありませんでした。

 

私は重い気持ちで患者さん宅に電話をしました。
運良く患者さんはご在宅だったので、私はまず調剤過誤があったことを謝罪しました。

 

そして、ジアゼパム錠2mgが本来は10日分処方だったにもかかわらず30日分渡してしまったこと・入力も間違っているので薬袋や薬情の内容も間違っていること・絶対に余分に飲まないでほしいことを伝え、お薬をご自宅まで取りに行く旨を伝えました。

 

しかし、患者さんは自宅には来てもらいたくないとのことでしたので、後日薬局にお薬を持参していただくようお願いしました。

 

翌日、患者さんが薬袋と薬を持って来局してくれました。
私は再度謝罪し、ジアゼパム錠2mgを20錠回収しました。

 

他の薬が30日分処方されていたにもかかわらずジアゼパム錠2mgのみが10日分処方だったのは、残薬があったからだそうです。

 

患者さんが言葉少なに答えてくれました。
そうだったのか、と納得したものの、いつもの薬だからといって服薬指導をしっかりせず、残薬確認もしなかった自分の行動を深く反省しました。

 

今回は、患者さんが余分な薬を薬局に持参してくれたので事なきを得ましたが、向精神薬を過剰に渡してしまっていたわけですから、事と次第によっては大事件になっていた可能性があります。

 

本当に何事もなくてよかった、と心から思いました。

今回の過誤はどうすれば防ぐことができたのか

 

調剤過誤防止策1.忙しい時間帯でも、調剤・監査は落ち着いて行う。

 

今回の調剤過誤は、処方が集中する時間帯に発生しました。

 

患者さんが次から次へとやってくるために薬剤師・事務職員ともに余裕がなく、また集中力を欠く状態であったために調剤・監査がおざなりになり、結果として処方内容の見落としが生じてしまったと考えています。

 

今回の処方は、他の薬剤がすべて30日分の処方であるにもかかわらず、ジアゼパム錠2mgのみが10日分の処方でした。

 

ジアゼパム錠2mgは処方の最後に記載されており、また、他の薬剤と用法が異なっていたために処方日数が異なることに気づきにくい状況でした。加えて、調剤者も監査者も他の薬剤が30日分処方であることに気を取られてしまい、思い込みで作業を行ってしまいました。

 

またレセコン入力に関しては、事務職員が「do入力」をしてしまい、前回のジアゼパム錠2mgの処方が30日分であったことからそれがそのまま反映されてしまったようです。

 

そこで、調剤にかかわる一連の作業および入力に関しては、処方せん原本あるいは処方せんコピーにもとづいてしっかりチェックなどを入れながら行うこととしました。

 

あたり前のことなのですが、余裕のない時にはなかなかできないものです。落ち着いて、どの処方もていねいに作業を行うよう注意していきたいと思います。

 

調剤過誤防止策2.忙しいと予想される時間帯は、ドラッグストア側にも協力を求める。

 

また、私が勤務している薬局はドラッグストアが併設されているため、調剤中でもドラッグストアから呼び出しがかかることがあります。しかし、実際に薬剤師が必要と思われるケースはほとんどなく、登録販売者あるいは他の従業員で対応可能なことが多いのです。

 

そこで忙しいと予想される時間帯はできるだけ調剤業務に集中できるように、第1類医薬品販売時以外は薬剤師を呼び出さないようドラッグストア側に協力してもらうことにしました。

 

もちろんドラッグストア側からは不満の声が上がりました。
調剤が混み合う時間はドラッグストア側も混み合うことが多く、人手が足りないからです。

 

また、シフトの関係で薬剤師がいる時間帯には登録販売者が不在のことも多く、資格を持たない一般従業員だと対応できない可能性があるという声もありました。

 

しかし、薬剤師が呼び出されても

 

「CMでやっていた○○がほしい。」
「高いところにある薬が取れないからとってほしい。」
「食事にとろみをつけるものがほしい。」
「いつもの介護用のおむつがないので取り寄せて欲しい。」
「チラシに載っていたしょうゆと洗剤が1ケースずつほしい。」

 

などといった内容のものが多く、一般従業員で十分対応できるケースがほとんどであることをドラッグストアの店長に説明しました。

 

店長は薬剤師が対応している内容をあまり把握していなかったようで(私たち薬剤師が今まで報告しなかったせいですが)、「お薬コーナーでお客さんがキョロキョロしていると、お薬のことで困っていると思いこんですぐに薬剤師コールをしていたかもしれない。申し訳なかった。」と理解を示してくれました。

 

また、今回の調剤過誤が規制医薬品にかかわるものであったこと、一歩間違えば大事件になりかねないことであったことを説明したところ、ドラッグストア側も可能な限り協力すると了承してもらうことができました。

 

調剤過誤防止策3.服薬指導前にレセコン入力内容のチェックを処方せんにもとづいて行う。

 

今回はレセコン入力にもミスがあったため、入力内容からミスに気づくことができませんでした。そこで、服薬指導前に薬剤の監査だけではなくレセコン入力内容も処方せんにもとづいてしっかりチェックする必要があると思いました。

 

入力内容にミスがあれば、患者さんのご負担金もかわってきます。
また、用法用量が間違って入力されてその内容が薬袋や薬情に反映された場合、患者さんの誤服用を招く可能性もあります。

 

したがって、患者さんにお薬を渡す前にしっかりレセコン入力内容もチェックしなければならないと思いました。

 

調剤過誤防止策4.処方内容がいつもとかわりなくても、必ず患者さんと一緒に処方内容の確認を行う。

 

そして処方内容がいつもとかわりがなくても、必ず患者さんと一緒に処方内容を確認しなければならないと思いました。

 

今回の場合、患者さんとしっかり話をしてジアゼパム錠に残薬があることを把握できていたら、調剤過誤を未然に防げたかもしれません。

 

確かに話をしてくれない患者さん・話を聞いてくれない患者さんはいます。
しかし、だからといって必要最低限のチェックを行わなくていいという理由にはなりません。

 

「お薬はいつもと同じですね。」
「おかわりはないですね。」

 

という逃げ腰の服薬指導ではなく、

 

「お薬の変更はないようですが、お薬が残っているとか飲めないお薬があるとか、そういったことはないですか?」
「外出時にもお薬は飲めていますか?」
「何かお困りのことはないですか?」

 

と積極的に問いかける姿勢で今後は服薬指導にあたりたいと思います。

 

調剤過誤防止策5.薬歴記入時に、再度レセコン入力内容などのチェックを処方せんにもとづいて行う。

 

今回は薬歴記入時にも入力ミスに気づかず、事務職員に指摘されて初めて調剤過誤に気がつきました。いつの間にか漫然と薬歴記入を行うようになってしまっていたことを反省しました。

 

処方内容が長期間変わらず患者さんともあまり話がないと、薬歴に記載する内容もマンネリ化してしまいます。
処方せん内容のチェックも甘くなりがちです。

 

しかしそれでは今回のような調剤過誤がまた発生してしまいます。

 

そこで、薬歴記入時に再度レセコン入力内容などのチェックを処方せんにもとづいてしっかり行わなければならないと思いました。薬歴記入時に入力ミスあるいは調剤ミスに気がつけば、その内容を早急に患者さんに伝えることができます。

 

これからは、どの処方もしっかりチェックしながら薬歴記入をしたいと思います。

 

調剤過誤防止策6.規制医薬品は棚卸をしっかり行う。入出庫の記録も随時行う。

 

今回の調剤過誤は、向精神薬を過剰に渡してしまうというものでした。

 

規制医薬品の棚卸は週1回行っているのですが、向精神薬は比較的処方頻度が高いため、万が一、同一薬剤で複数の調剤過誤が重なってしまうとどの処方で過誤が起こったのか追跡調査が難しくなってしまいます。

 

そこで今回の調剤過誤をきっかけに、規制医薬品のあつかいを見直すことになりました。

 

まず、棚卸は毎日行うことにしました。
とはいえ、規制医薬品の全品目を毎日棚卸するのは大変です。

 

そこで、入出庫のあった薬剤のみをその日のうちに棚卸することにしました。これならば品目数が限られているので、毎日でも棚卸することができます。

 

さらに、規制医薬品の入出庫記録を手書きで行うことにしました。
もちろん今までも麻薬などは入出庫記録をつけていたのですが、今回からは規制医薬品すべてを記録対象としました

 

記録は薬剤ごとに用意された用紙に行い、ファイリングすることとなりました。具体的には、入庫時とピッキング時に、入出庫日・入庫した卸の会社名あるいは患者さんの氏名・入出庫数・在庫数(麻薬はロット番号も)を薬剤ごとの記録用紙に記載するのです。

 

もっとも、今回のようにレセコン入力ミスと調剤過誤が同時に起こった場合には棚卸をしても在庫にずれがないので、調剤過誤をみつけることができません。

 

しかし、記録をつけることになれば記録時に処方せんをしっかり確認することになると考えます。また、万が一調剤過誤があっても記録が残っていれば、記憶があいまいでも過去にさかのぼって原因追求することが容易になります。

 

忙しい時に煩雑な作業が増えるのはイヤなのですが、昨今規制医薬品の盗難事件などが増えていることなどから、正確な在庫数の把握、また調剤過誤防止のためにやむを得ないと思います。

 

 

参考資料

 

日経メディカル ジアゼパム錠2mg「アメル」
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/11/1124017F2194.html

 

この記事は実際に発生した調剤過誤事例、インシデント事例の聞き取りレポートを元にして、薬剤師個人の年齢や性別等情報を変更した上、薬剤師本人の了承の元に記事化しております。

この記事をかいた人


久米真純(くめ ますみ)薬剤師
薬剤師歴12年…病院勤務6年を経て、大手製薬会社や製薬会社卸で学術DIとして長年勤務してきました。個人的経験から、特に病院勤務での医師やコメディカルの方々との連携した業務には思い入れがあります。OTC医薬品には精通しております。旦那は外資系大手製薬会社のMRとして勤務中。

【2018最新版】正社員登録高格付け企業 Best3

【薬剤師の調剤過誤事例No.2】向精神薬を過剰に渡してしまう調剤過誤が発生(誤服用なし、健康被害なし)

薬キャリ(エムスリーキャリア)の特徴

エムスリーキャリアが運営する「薬キャリ」は、優秀な自社コンサルタントと求人量に加え、協力企業36社以上の求人リソースも同時検索できるハイブリッド型の薬剤師転職サイトです。

薬キャリと協力会社が保有する求人数は数万件以上の膨大な数になり、豊富な求人の中から3社を選んで、効率的に転職活動を行うことが可能となっています。

運営のエムスリーキャリアは優秀なコンサルタント人材が多く、保有薬剤師求人数も豊富であることが著名な大手企業であり、非常に強力な薬剤師転職サイトであるといえます。

価格 登録無料 0円
評価 評価5
備考 お試し登録OK
薬キャリ(エムスリーキャリア)の総評

【AAA評価(最高評価)】…登録を強くおすすめする薬剤師転職サイトです。組織力がありコンサルタントの能力が標準化されているので担当者に外れが少ない。組織経営規模も大きく、大型の医療機関とでも対等に交渉ができ、強力な情報網で他社に比べて求人数も圧倒的に多く保有。安心して転職サポートを委ねられます。この評価の薬剤師転職サイトをとりあえず1つ抑えて基準とし、追加でAA評価もしくはA評価の薬剤師紹介会社を1つか2つ登録すれば、大変満足のいく転職活動を行うことができます。

ファルマスタッフ(メディカルリソース)の特徴

薬剤師の正社員転職で総合力が評価されたのは、東証一部企業「日本調剤グループ」が提供する「ファルマスタッフ」となりました。

年収700万円以上の特殊非公開求人が多数そろっており、今すぐ転職をしなくとも情報収集目的でのお試し無料登録にも快く対応してくれる優良企業の筆頭となります。

また、初めての転職やブランクのある復職といった方にとっても安心してケアを受けられる企業の1社です。全国15拠点展開で転職相談満足度94.9%をを誇ります。無料でお試し登録OK

価格 登録無料 0円
評価 評価4.5
備考 お試し登録OK
ファルマスタッフ(メディカルリソース)の総評

【AAA評価(最高評価)】…登録を強くおすすめする薬剤師転職サイトです。組織力がありコンサルタントの能力が標準化されているので担当者に外れが少ない。組織経営規模も大きく、大型の医療機関とでも対等に交渉ができ、強力な情報網で他社に比べて求人数も圧倒的に多く保有。安心して転職サポートを委ねられます。この評価の薬剤師転職サイトをとりあえず1つ抑えて基準とし、追加でAA評価もしくはA評価の薬剤師紹介会社を1つか2つ登録すれば、大変満足のいく転職活動を行うことができます。

薬剤師転職ドットコム(メディウェル)の特徴

薬剤師転職サイト業界では大手に属する「メディウェル」が提供するサイト。調剤大手のアインファーマシーズ関連企業ですので、担当コンサルは業界知識も豊富。安心して登録をすることができます。

メディウェルは薬剤師だけでなく、医師、他コメディカルの転職支援でも大きな成果を出している企業なので、支援実績と経験に関してはずば抜けたものがあります。

また「多数の非公開求人」を保有していることも大きな特徴で、吊るしの求人からは発見できない好条件求人は、ほとんどここから見つかります。無料でお試し登録OK

価格 登録無料 0円
評価 評価4.5
備考 お試し登録OK
薬剤師転職ドットコム(メディウェル)の総評

【AAA評価(最高評価)】…登録を強くおすすめする薬剤師転職サイトです。組織力がありコンサルタントの能力が標準化されているので担当者に外れが少ない。組織経営規模も大きく、大型の医療機関とでも対等に交渉ができ、強力な情報網で他社に比べて求人数も圧倒的に多く保有。安心して転職サポートを委ねられます。この評価の薬剤師転職サイトをとりあえず1つ抑えて基準とし、追加でAA評価もしくはA評価の薬剤師紹介会社を1つか2つ登録すれば、大変満足のいく転職活動を行うことができます。