【医療ニュースPickUp 2015年10月29日】 名前の似た薬を薬剤師が間違って調剤したケースが246件発覚
205年10月26日、日本医療機能評価機構は、「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年 年報」を公表した。これによると、平成26年度中に「名前の似た薬を薬剤師が間違って調剤したケース」が246件あったことが分かった。
追跡調査の結果、男女で異なる結果がでた
この事業は、調剤薬局などからのヒヤリ・ハットに関する報告を取りまとめて分析を行う事業であり、2014年度中では、年間累計で8,244の薬局が登録している。これらの中で、
- 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。
- 誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・治療を要 した事例。
- 誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。
などの情報を登録することとなっており、実際に報告のあった薬局数は537、公表件数は5,299件であった。
このうち、約3割は「薬を手渡す」など、実際に医療行為として行われている。また、調剤する際に起きた事例が4,594件、「数量間違い」が1,343件、「薬剤取り違え」817件などであった。
さらに、薬の販売名が似ていたために間違えたケースも246件あり、これらの中には、前年も報告された組み合わせが30種類以上あった。中には「血圧降下薬」と「アレルギー薬」など、目的や用途が異なる薬剤のケースもみられた。
取り違えが起こりやすい薬剤の例
- アレロック × アムロジン
- ザンタック × ザイロリック
- シルニジピン × ニフェジピン
- セスデン × ゼスラン
- トミロン × トロキシン
- ニセルゴリン × ニコランジル
- ラシックス ラミシール など
また、薬剤の取り違いが起こった理由としては、「調剤時、薬剤の確認を怠った」が3,933件と最も多く、次いで、「調剤時、勤務状況が繁忙だった」などが挙がっている。しかしその一方で、薬剤名がよく似ていること、処方箋からの入力時に「頭文字2文字」などの簡易入力でもある程度は薬品が検索出来てしまうことなども、薬剤取り違えの理由として挙がっている。
主な成分に違いがなくても、例えば「ザジテン点鼻液」と「ザジテン点眼液」、「リボスチン点鼻液」と「リボスチン点眼液」では、使いかたが違う。実際に起きた事例では、患者が高齢者だったためか、それまでの点鼻薬から点眼薬に変わったことに気付かないケースもあった。
同機構では、薬剤師への注意喚起も必要としながらも「名称変更なども含め、行政や業界で対応を考えてほしい」としている。
参考資料
公益財団法人 日本医療機能評価機構
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年 年報
http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_report_2014.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
「薬の取り違い」ってコワイですよね。例えば、例として挙げた「ザジテン点鼻液」と「ザジテン点眼液」。一般的には、いつも「点眼」の人が、「点鼻」を渡されると、あれ?と考えるでしょう。しかし高齢者であれば「あれ?」と思わないこともあるでしょうし、「あれ?」と思っても言わない、というケースもあるでしょう。今回の報告書によると、実際にそういったケースもあったようです。
この他、「調剤忘れ」とか「容量間違い」って、コワイと思います。患者って、処方箋をそれほどじっくりとは見ていません。結果的に自分の手元に来る薬剤と、お薬の説明書は見ますけど、処方箋を見たところで、何が書いてあるのか分からない人が多いからです。
多くの人は、お薬手帳と併せて(持っていれば)確認することで、初めて「前と違う?」と考える人もいます。特に小児科などは、薬局内で調剤して1包ずつに分けているため、中身が間違っていても、患者(とその親)には分かりませんので、本当に怖いです。最近その薬局に入った新しい薬剤は間違いが起きそうですし、ハイリスク薬と言われる薬剤での間違いは影響が大きくなりますよね。
とはいえ、薬剤師さんだって間違えることはあります。この辺は例えば、もっと人ではなくシステム的な管理ができないかとか、薬剤の名称や包装を似通ったものにしないとか、何か方法はないのかなかと思います。
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