現在の充足度別にみた医師科目別格差とは=市場分析=
■ 記事作成日 2015/6/13 ■ 最終更新日 2017/12/6
少し古いデータにはなりますが、厚生労働省が平成22年に行った「病院等における必要医師数実態調査」によると、科目別での医師の充足度には、それなりの格差があります。
今回は「充足度」を中心に、医師の転職市場を考えてみます。
診療科目別の充足格差について
ここでいう「充足度」は厚生労働省が公表している統計結果を元に
(現役医師数+求人医師数)÷現役医師数=充足度
として計算しています。
厚生労働省の調査によると、必要求人医師の求人理由(複数回答)として多いのが
- 現員医師の負担軽減(入院又は外来患者数が多い)…11,757件(27.8%)
- 退職医師の補充…7,413件(17.5%)
- 現員医師の負担軽減(日直・宿直が多い)…6,860件(16.2%)
となっています。結局のところは「現役医師の負担を軽減したい」というものが多いことは確実なのですが、2位に「退職医師の補充」が入っているということは、それだけ医師の転職あるいは退職(年齢的なものも含む)による、人員の変動が大きいことを表していると思われます。
科目別に見ると、充足度には15ポイントくらいの開きがあります。この差を大きいと見るか小さいと見るかは個人の置かれている立場や環境にもよるかもしれませんが、最も充足している科の充足度はおよそ93%、最も充足していない科はおよそ78%でした。
もっとも充足しているのは形成外科?
このデータから算出した結果では、「形成外科」の充足度がおよそ93.3%と、最も高くなっています。次いで「小児外科(およそ93%)」、「美容外科(およそ92%)」と続きます。
しかし、「現役医師数+(さらに)必要な医師数」で見ると、形成外科は25位、小児外科は30位、美容外科は39位ですので、需要自体がそれほど多くはないことが分かります。
形成外科とは単純にいえば「熱傷の傷跡や先天的・後天的身体の奇形など、傷跡や身体の形を元通りに近づける治療をする」科ですから、患者数そのものが少ないという傾向があり、ある意味「狭き門」なのかもしれません。しかし、本当にウデの良い形成外科医の元には、全国各地から患者が集まってくるのも事実です。
日本に形成外科が登場してからおよそ50年が経過していますが、一般的には「形成外科って何?」という人もまだまだ多いでしょう。
しかし、国民全体からみるとごく一部なのかもしれませんが、形成外科医の治療により、QOLが各段に向上する人たちは確実に存在します。その中でも本当にウデの良い形成外科医は、世の中に必要とされているのです。
専門医が一番悲鳴を上げているのはリハビリ科?
一方、同じように充足度から考えると、医師数が足りていない科は次のようになります。
- リハビリ科:現役医師数(1,750人)、必要医師数(499人)、充足度(77.8%)
- 救急科:現役医師数(2,610人)、必要医師数(726人)、充足度(78.2%)
救急医が足りない!というのは、いわゆる「救急搬送のたらい回し」などが時折報道されることもありますので、一般の人から見ても理解できる数値なのではないかと思います。
しかしリハビリ科についてはどうでしょうか。
リハビリ科=リハビリテーション科(リハ科)の学会が創立されたのは1963年、およそ50年前になります。しかし標榜認可がおりたのは1996年、まだ20年も経っていません。
以前こちらのコンテンツでも、リハビリテーション医の転職市場調査について取り上げたことがありますが、転職市場としてはかなりニッチな科。しかし平日日勤のみの勤務が多いことや夜間休日を問わない緊急時の呼び出しは基本的に無いことから、女性医師の活躍の場として注目されている科です。
一般的には馴染みの薄い科かもしれませんが、高齢化が進む日本では、今後ますます需要が高まる可能性があります。試しに「リハビリテーション科 医師 募集」などで検索してみると、中規模病院から大病院まで、さまざまな規模やタイプの医療機関で、求人情報を公開しています。
いくつかの求人情報を見てみると、他科に対しては「当院規定による」であっても、リハビリ科に関しては、それなりに経験年数があれば「年収1,000万円~」というところもあります。
これらの事から、リハビリ科は、比較的高額な報酬が約束され、今後の需要の拡大が望まれている科であるといえます。現役のリハビリ科医師から見ても、今後さらに専門医が増えて欲しいと、熱望されている科なのかもしれません。
【参考資料】
厚生労働省 必要医師数実態調査詳細結果(全体版)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/other/dl/14.pdf
一般社団法人 日本形成外科学会 形成外科とは
http://www.jsprs.or.jp/general/
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 学会の沿革
http://www.jarm.or.jp/civic/civic_history/
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