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改正労働安全衛生法がもたらすもの

改正労働安全衛生法と産業医の転職市場

■ 記事作成日 2015/7/21 ■ 最終更新日 2017/12/6

「ストレスチェック義務化法」…最近、新聞・テレビ・Webなどのニュースで、このキーワードがやたら目立つようになってきました。正式には、「改正労働安全衛生法」。2015年12月1日から施行されるこの法律は、働く人のメンタルヘルスの観点から、【ストレスチェック制度】を企業などに導入させるものです。

 

ストレスチェック制度とは、労働者に対して行う心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)や、検査結果に基づく医師による面接指導の実施などを、事業者に義務付ける制度です。従業員数50人以上の企業に義務化され、従業員数50人未満の事業場は、当分の間努力義務を負う事になります。

 

この法改正により、医師をとりまく市場にも、新しい風が吹きつつあります。近年、QOML(Quality of My Life/Medical staffs‘ Lifeの略語)などが重要視される傾向から、医師にも人気が高い産業医ですが、そのニーズが、これまで以上に高くなる事は確実です。

 

転職市場においても、益々注目を集める「産業医」について、その動向を考えてみることにしましょう。


ストレスチェック義務化法のポイント

 

先ずは、改正労働安全衛生法の内容を確認しておきましょう。

 

 

<企業の実施義務内容>

 

【1】全従業員に対するストレスチェック実施(従業員50名以上の企業に義務化。50名以下の企業に努力義務)

 

【2】高いストレス状態で、申し出を行った社員に医師面接実施

 

【3】医師面接後、医師の意見を反映した上で必要に応じた就業上の措置(ストレスチェックを原因に不利益を与えてはいけない)

 

<労働基準監督署への報告義務内容/年一回>

 

【1】 ストレスチェックの実施時期の報告

 

【2】ストレスチェックの対象人数の報告

 

【3】ストレスチェックの受検人数の報告

 

【4】面接指導の実施人数の報告

 

<努力義務>

 

【1】ストレスチェックの集団分析(個人を特定しない形で、職場全体や部署ごとの傾向値を分析)

 

【2】その結果を踏まえた職場環境改善推進
※集団分析:個人結果がわからないように集計し、職場の一定規模の集団(部、課など)ごとに行うストレス状況の分析

 

<厚生労働省参考URL>

 

改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書をとりまとめました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000069013.html

 

改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」の具体的な運用方法を定めた省令、告示、指針を公表します。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000082587.html

 

職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策・心身両面にわたる健康づくり(THP)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/

産業医市場の動向

改正労働安全衛生法と産業医の転職市場

 

「改正労働安全衛生法」…これを受けて、医師の産業医分野における市場は、どのような動向を見せているのでしょうか?

 

ネット上では、産業医専門の転職サイトや、改正労働安全衛生法に対応するためのシステムサービス紹介サイトが勢いよく増え続けています。産業医認定のための講座も、各地で盛んに開かれています。つまり、産業医の需要は確実に拡大していっていると言えるでしょう。

 

それゆえ現在、労働者のメンタルヘルスを適切にケアできる専門の「産業医不足」が、大きな社会的課題となっています。

 

これまでも、従業員50名以上の事業場は、産業医選任による訪問や常駐(従業員1000名以上の事業場/有害業務に従事させる事業場は500名以上)が義務付けられていましたが、これに加わり新たに「ストレスチェック」が必要になりました。

 

ストレスチェックには、労働基準監督署への報告義務も、違反した場合の罰則規定もあります。さらには、国が企業を査定のうえ、「健康経営銘柄」として選定し、企業名を公表する仕組みも動き出そうとしています。

 

超過労働・生活習慣病・メンタルヘルスetc.…企業はもはや、利益を上げるだけではNG!…健康経営をしていなければ、たちまち「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまいます。今や健康経営は、長期安定経営に不可欠なものとなっているのです。

 

企業にとって切実な健康経営問題を解決するための、いわば参謀ともいえる産業医。企業の成長の基盤を支える業務を担う「産業医」は、経済界から熱い熱い注目を浴びているのです。

 

産業医の資格とは?

 

そもそも、産業医になるになる要件はどのようなものか?…改めて確認しましょう。産業医は、医師免許を取得している事に加えて、以下何れかの条件を満たしている必要があります。

 

【1】法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理などを行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定するもの(法人に限る。)が行うものを修了した者。

 

【2】産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修した者。

 

【3】労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの。

 

【4】学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあった者。

 

【5】前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者。(現在、定められている者はありません)

 

産業医研修の情報は…日本医師会の会報誌やホームページ、都道府県医師会の会報誌やホームページ、公益財団法人産業医学振興財団のホームページ(産業医学振興財団が開催する産業医研修を案内)、産業医学ジャーナル(年6回発行される会報誌:産業医学振興財団が開催する産業医研修を案内)、都道府県産業保健総合支援ホームページなどで取得する事ができます。最近では、市場のニーズを背景に、産業医研修の機会も増えてきており、受講しやすい環境が整いつつあります。

 

▼参考URL:日本医師会認定産業医サイト
http://jmaqc.jp/sang/index.php

 

産業医の仕事内容とは?

 

そもそも、産業医の仕事内容とはどのようなものか?…労働安全衛生規則では、次のように定められています。

 

【1】健康診断、面接指導等の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること。

 

【2】健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること

 

【3】労働衛生教育に関すること。

 

【4】労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

 

このように産業医は、一般的な臨床医とは異なり、基本的には診察も治療も処方箋発行もしません。診察や治療などは、あくまで社員が個人的にかかる病医院の主治医の職務です。産業医は、自らを選任した企業などに対し、労働者の健康管理全般においいて確認・管理し、必要に応じて意見を述べたり、勧告をする事が職務になるのです。

 

例えば…特定の労働者がうつ病になったとしましょう。主治医が、医学的観点から「メンタルヘルスの問題が解決され、職場復帰が可能だ」…と判断したケースでも、産業医が企業の状況に問題を指摘した場合は、職場復帰が成されないケースもあります。主治医は医学的観点に加えて、職場環境や制度状況…それが特定の労働者に与える影響…特定の労働者が他の労働者に与える影響などを総合的に鑑み、判断しなければなりません。

 

つまり産業医は、自らを選任した企業と、その労働者に、労働安全衛生における社会的責任を負う事になると言えます。

 

これからの産業医の仕事

 

そもそも産業医とは、高度成長期に生まれた職業です。もともと製造現場などの劣悪な労働環境から労働者を守る観点にて敷設された制度・職務であり、その誕生背景には、当時の社会問題…公害や労働災害の多発…がありました。

 

しかし、社会が成熟し、経済環境や労働環境が変化する中で、その仕事の主たる内容にも変化がおきてきます。「ストレスチェック義務化法」はその典型で、うつ病などを発症し、職場から長期離脱する労働者が増えてきている背景などから、心の問題にスポットを当てた職務が増加しているようです。メンタルヘルスの原因となるような、セクハラやパワハラ、ITの発達による職場環境の変化なども、産業医が汲みとり、考えなければならない問題です。

 

また、これまで職場の健康管理というと、労働者への福利厚生や、コンプライアンスの遵守という側面からのアプローチが強かったと言えますが、近年その社会的思考も、大きく変化してきました。労働者の心身の健康こそが、企業成長のカギであり、健康経営こそが長期安定成長のマスターピースという考え方が主流となり、積極的に「健康経営」の施策を講じ、成長戦略の一環として取り入れる企業が増加しています。

 

さらに、産業医の誕生期には無かった新たな職務も顕在化しています。全国的・国際的なパンデミック(爆発感染)に備えた感染症予防策や、地震や津波などの災害危機に備える対処方法の敷設など、あらゆる企業の危機管理対策にも、産業医として意見を述べ、この分野のプロフェッショナルとして、プラン構築を牽引すべき役割も担います。

 

産業医は企業にとって、なくてはならない「参謀」です。それは今、必要不可欠な存在として、大きな市場ニーズをもたらしています。


産業医というキャリアデザイン

改正労働安全衛生法と産業医の転職市場

 

熱い注目を浴びている、産業医という職務ですが…その一般的なキャリアデザインは、どのようなものか?…考えてみましょう。

 

産業医は、50名以上の労働者が勤務する事業場には、月に1回以上訪問する事が定められていますが、この場合の殆どは、嘱託産業医という非常勤勤務になります。産業医は企業から認定を受けた者でなければならないため、スポットアルバイトでの募集は少なく、殆どが定期アルバイトでの嘱託契約になると考えられます。

 

また、1000人以上の労働者が勤務する事業場には、専任の産業医の常駐が義務付けられています。(有害業務に従事させる事業場は500名以上)産業医はその労働体系が一般企業の就業規則に馴染まない事が多いためか、その殆どは正社員ではなく、契約社員という身分になると考えられます。

 

産業医のニーズが高まってきているのは事実ですが、産業医一本で一つの企業に選任する働き方は、産業医全体の10%程度だと言われています。1000人以上の事業場など、そうそう多くある訳ではありません。名だたる大企業でさえ、本社や基幹支店や基幹工場でもない限り、その規模の事業場はそうそう持たないでしょう。

 

従って、企業に選任として従事する産業医になるには、それ相応のスキルやキャリアが求められる事になります。外資系企業の場合はその傾向が顕著で、産業医をエキスパート・スペシャリストとして迎え入れるという環境が多いようです。

 

そのため、産業医一本でやっていくには、産業医としてのキャリアを積んでスペシャリストになり、大企業に選任された専任産業医になるか、複数の中小企業などをかけもつ嘱託産業医になるか…というキャリアデザインになるでしょう。

 

スペシャリストとしての産業医に求められる事

 

スペシャリスト産業医・エキスパート産業医と言われる人には、多岐に渡る知見が求められます。医学領域の知識や経験はもちろん、労務に関する法律や、IT環境が与える影響、国内外の災害や感染症情報など、健康経営に関わる全ての事に広いアンテナを張り巡らし、向学心を忘れずにいる事が重要です。刻々と変わる経済状況や社会状況に、先手先手の精神で対策を講じる必要があるのです。

 

また、コミュニケーション能力も、通常の医業以上に重要になってきます。これまでの患者や家族に対するコミュニケーションは、問題を抱えた特定の労働者や家族に対するものと通ずるものとしても、経営的な観点・プロジェクト遂行的な観点で、医業を専門としないあらゆるプロと連携し、多くの部署に渡る管理をしていくわけですから、マネージメント能力の一つとしての、コミュニケーション能力が問われるのです。

 

産業医の仕事には、企業活動やビジネスに対する興味関心はもとより、協調性やコミュニケーション能力に加え、それらを総合したプロジェクト推進力が求められます。

 

産業医のやりがいは?

 

いくら大企業と言えども、一つの企業にそれほど多くの産業医が勤務している訳ではありません。嘱託産業医の場合はもちろん、専属産業医の場合でも、企業内診療所などで働く医師が産業医を兼ねる事もあり、産業医一人体制の職場が非常に多いと言えるでしょう。そのため、産業医には大きな裁量権がある事が多く、自らが労働者の健康を守り、健康経営に直接寄与しているという充実感が、大きな遣り甲斐の源となるようです。

 

また、経済活動の中に身を置き、医業以外のビジネススキルを培うキャリアを持てる事は、とりわけ専門職である医師にとって、稀有で貴重な事でしょう。一般の医師がなかなか得られないビジネスパーソンとしてのキャリアや人脈を得られる事に、産業医の醍醐味を感じている人も多いといえます。

 

産業医の報酬は?

 

産業医の報酬は、中小企業などに選任された嘱託産業医の場合、月1回の訪問で@2万円~20万円といったところです。月に何回訪問するのか?どんな職務内容なのか?訪問する場所の環境がどうなのか?(危険な職務の事業場や、僻地の事業場などは割増される傾向にあります)…などによって変わってきますが、概ねアルバイト程度の金額になります。

 

大企業などに選任された専属産業医の場合、ほぼ臨床の勤務医と同等の程度の報酬だと考えて良いでしょう。週4日の勤務で、キャリアに応じて800万円程度~1800万円程度と幅があります。

 

外資系企業の産業医になる場合は、当然ながら英語などの語学力や、外資系企業に馴染む特異なコミュニケーション力やマネージメント力が問われるため、嘱託産業医でも専属産業医でも、相場より10%~20%程度高い求人が多いようです。

 

産業医の仕事は、卒後年数が少ない時は、割高でお得な職務と感じるかもしれません。しかし、卒後20年も経つと、臨床医でスペシャリストとなった医師の年収(2000万円以上~)には及ばないケースが殆どです。これは、企業の昇給ベースに合わせた人事考課が成されているからと言われています。

 

また、産業医の場合、嘱託契約や契約社員契約が多いため、退職金が設定されない場合もあり、専属の産業医になる場合は、退職金の有無などをしっかりと確認しておく必要があるでしょう。

 

産業医という働き方のメリットは?

 

産業医という職務を選ぶ人の多くは、その魅力の一つにQOML(Quality of My Life/Medical staffs‘ Lifeの略語)の高さを挙げています。病院の臨床医と違って、当直やオンコールがある訳ではありません。殆どのケースで、企業の定時勤務や、それよりも短い数時間という勤務で成り立ちます。さらに企業によっては、産業医の勤務体制に研究日を設けている所もあり、プライベートの充実や、自らの研究や研鑽に、多くの時間を充てられます。よって子育て中の医師や、自らの人生の質や労働の質にこだわりを持っている医師などが、その時間的拘束やイレギュラーな事態の少なさから、産業医を志望する事も多いようです。

 

また、決して医業だけでは得られないキャリアや人脈を築き、医師の立場から経済活動に参加するという希有な立ち位置に、魅力を感じる医師も多いようです。将来、病院経営をはじめとするマネージメントを展望している医師にも、多種多様な業種の成り立ちを把握し、医業以外のビジネススキルを身に着ける好機になると言えます。

 

産業医という働き方のデメリットは?

 

産業医のキャリアのデメリットは、臨床スキルが保てない、向上できないという一点につきます。特に外科医などの場合、臨床や執刀にブランクがあれば、その職務の質は、目に見えて落ちてくる事でしょう。

 

従って、産業医一本でやっていくと決めたキャリアデザインでない限り、臨床の仕事を放り投げる事はできません。そのため、開業医や勤務医が非常勤アルバイトで産業医に従事したり、専属産業医の場合でも週に一度の研究日を臨床に充てたりする人が多いようです。

 

臨床医としてのキャリアをどう捉えるか?…が、産業医としてのキャリアを選ぶ際の、大きな問題点になると考えられます。


産業医への転職…ケーススタディから考える

改正労働安全衛生法と産業医の転職市場

 

産業医への転職…産業医というキャリアの経験…これから産業医というニーズは高まるばかりという市場背景から、産業医という働き方を検討している医師も増えてきているようです。

 

ここでは、産業医という働き方を自らのキャリアデザインに組み込んだ医師たちのケーススタディを見る事で、その方向性を考えてみる事にしましょう。

 

アクシデントに導かれて産業医となった開業医A医師

 

A医師は、整形外科の開業医です。A医師が産業医となった経緯は、偶然によるものでした。ある大手企業の工場で働いていた労働者が、不幸な労働災害により、A医師のクリニックに運び込まれ、診療・治療を行った事がきっかけなのです。

 

幸いにも当該工場が良識のある企業であったため、この事故を重く捉え、労働者の主治医であったA医師にもヒアリングを求め、再発防止策を作成するボードメンバーに加わる依頼をされました。そんな経験から、「労働者の安全と健康を守るという社会的重要性と、医師としての役割の重要性」を、ひしひしと感じるようになったそうです。

 

そんなA医師は、自らの意思で研修を受け、認定産業医の資格を取得しました。すると、さきの企業から、産業医に選任したいという声がかかり、嘱託産業医として、週に一度、半日をその企業の訪問へと費やすようになりました。

 

開業医という仕事は遣り甲斐はあるものの、非常に孤独で、狭い世界で完結し、知らず知らずのうちに、了見も狭くなっていくものです。

 

そんなA医師にとって産業医の職務は、正に渡りに船でした。A医師はその企業で労働安全衛生委員会を立上げ、労働者の安全衛生体制を牽引する立場になりました。ストレスチェック義務化法にも、施行前から早々と取組み、業界のモデルケースとして注目を浴びるほどになったのです。

 

そして…大手転職エージェントから、ヘッドハンティングのアプローチを受ける事になります。大手企業の専属産業医の仕事で、年収は3000万円という破格の好条件でした。A医師の開業医としての年収よりも、やや多い金額です。経営のリスクを負わずとも自らが興味のある産業医という分野で、業界やマスコミの注目を浴びながら、キャリア形成をできる!…転職エージェントの話では、健康経営をIR広報活動の一環に掲げている当該企業は、A医師に書籍執筆の機会も設け、当該企業の取組のシンボルに据えようとしているとの事でした。

 

A医師は、自らのキャリア形成に魅力的なオファーを前に、相当悩みました。しかし結局、そのオファーを断ります。A医師は、有名な産業医である前に、良い医師であり、良い人間でありたいと考えたからです。

 

A医師は今、嘱託契約企業を8社まで増やし、週に2.5日を産業医の職務に充てています。それは、ヘッドハンティングを受けた大手転職エージェントとの出逢いが縁で、専属産業医を断った後も、嘱託産業医のオファーが後を絶たなかったからです。

 

月1回訪問する企業から、毎週訪問する企業まで実に様々ですが、開業医という立ち位置に居ながら、産業医分野でもエキスパートと言える状況になりました。複数の企業で経験を積む事で、多くのケーススタディに対峙し、産業医としてのキャリアは確実にアップし、一社における専属産業医の道を選んだよりも、多くの引き出しが出来ているようです。そんなA医師は、各種団体の産業医シンポジウムなどで講演を依頼されるような存在に。

 

A医師は、時代の潮流により、年収の意味でも、キャリアデザインの意味でも、確実に成功を収めているようです。

 

~キャリア考コメント~

 

A医師は、開業医という立場を守った事が、結果、多くの企業での経験を積む事に繋がり、産業医のエキスパートになる道が拓けてきました。良い産業医である前に良い医師であり、良い人間でありたいという軸がぶれなかったため、キャリアの迷路で迷う事無く、良い方向へと切り拓く事が出来たのでしょう。

 

A医師の医師として、人間としての軸は、ヘッドハンティングを断った後の転職エージェントとの縁も、より良いものへと昇華していったようです。

 

専属産業医となったB医師

 

B医師は、子育て中の外科医です。出産後も可能な限り仕事に従事していましたが、その激務と子育ての両立は無理だという考えに至り、別の道を模索していました。

 

そんな時目についたのが、産業医という仕事です。以前からこの職務は知っていましたが、最近マスコミで「ストレスチェック義務化法」や「産業医」という言葉をよく見聞きする事に活路を感じ、認定産業医の資格を取得しました。

 

とはいえ、B医師は外科医です。産業医のキャリアは皆無で、スキルも充分とは言えないでしょう。産業医として働くアテもない事から、ネットで転職エージェントに登録し、産業医へと転職する道を探りました。

 

しかしながら、専属産業医の求人は、思ったほど多くはありません。増加傾向と言えども、キャリアがある人からニーズが埋まっていくものです。コンサルタントと相談し、先ずは週に1度勤務する、嘱託産業医となって、キャリアを積んでみる事にしました。

 

B医師はもともと週4日勤務であったため、何とかこの体制で頑張り、一年後、再度コンサルタントに相談しました。すると…複数の専属産業医の求人を紹介してもらえ、内定を得る事に成功しました。

 

週4日の勤務で、定時前上がり。年収は1200万円です。産業医としてのキャリアがある事と、女性ならではのコミュニケーション能力が買われての採用でした。

 

B医師は、安定した労働時間が保障されている産業医という仕事のおかげで、年収を保ちながら、家庭生活にも充分な時間をとる事ができるようになりました。

 

外科医としてのスキル低下は否めませんが、B医師は、外科医から産業医へとキャリアチェンジする意思を固めていたので、問題はありません。むしろ、産業医のスペシャリストとなり、家庭生活と両立しながら仕事が続けられる環境に、大変満足していると言います。

 

~キャリア考コメント~

 

B医師は、外科医から産業医への完全なキャリアチェンジの前に、嘱託産業医を経験した事が、より良いキャリアデザインに繋がったと言えるでしょう。いくら産業医が売り手市場だとしても、全く経験のない素人医師を、両手を広げて迎え入れる企業などありません。転職エージェントのコンサルタントも、素人人材を企業に紹介する事はなかなかできないというのが実情です。

 

もしもドクターが産業医へのキャリアチェンジを真剣に考える場合、全く経験のない状況ならば、B医師のように、段階的なキャリアデザインを描く事をお勧めします。それが詰まる所、大きく花咲くキャリアデザインの近道となるのです。

 

とりあえず認定産業医となったC医師

 

C医師は、都心の大病院に勤める消化器系の内科医です。最近、不調の原因がメンタルヘルスに起因する患者が増えてきた事や、「ストレスチェック義務化法」が施行される事などから、マーケティング的に考え、認定産業医の資格を取得する事にしました。

 

最短で資格取得をしようと考え、産業医科大学の講習を数日間集中して受ける事で、その資格を得ました。

 

今、内科医の仕事に遣り甲斐を感じ、充実しているC医師ですが、これからの医療業界を展望すると、産業医の資格は、とれるうちに取っておいた方が、未来のキャリアデザインに幅が出ると思ったそうです。

 

C医師は、転職エージェントに相談に行きました。すぐさま転職する意思は無く、産業医にキャリアチェンジするつもりもありません。しかしながら、転職エージェントはC医師に興味を示してくれたので、キャリアプランの相談を続ける事にしました。

 

今、C医師は、現職に影響のない程度で嘱託契約ができる産業医の仕事があれば、アルバイトとして従事してみたいと考えています。転職エージェントのコンサルタントはその状況を理解し、内科医としてのC医師・産業医としてのC医師と複数の側面からサポートしてくれると言っているそうです。

 

C医師は、自分の未来の可能性が拡がった事を喜び、内科医としての仕事にも、より一層精進できるようになったそうです。

 

~キャリア考コメント~

 

C医師は、実に明るいキャリアデザインをし、実に良い転職エージェント活用をしていると言えます。転職エージェントのサイトには、「すぐに転職を考えていない方でも歓迎です。じっくりとキャリアプランを構築しましょう。」と書かれている事が多いものの、転職が切実ではない医師は、なかなか行動に移さないものです。

 

C医師は、産業医という資格を得る事で、キャリアデザインの幅が広がり、未知の分野で、転職エージェントという参謀を得る事ができたのです。未来の道が明るく見える人は、充実した今日を生きる事ができます。

 

C医師は、「市場を見て、とりあえず産業医になった」…と言っていますが、今の市場でのこの選択は、キャリアにプラスに働く、好適なチョイスであったと言えるでしょう。


人気傾向が続く産業医市場

改正労働安全衛生法と産業医の転職市場

 

産業医という職務は、メンタルヘルスという概念の登場で、その役割が昇華し、近年、大きな注目を浴びています。「ストレスチェック義務化法」により、その注目は輪をかけて広がり、医師の転職やアルバイトとしても、人気があると言えるでしょう。

 

メンタルヘルス、生活習慣病、感染症、電磁波対策…etc.産業医が誕生した高度成長期には無かった問題が、現代社会には多々あります。健康経営という概念が生まれ、優良銘柄として公表される取り組みなどから、産業医の仕事は、企業の安定成長や株価にまで影響すると考えられています。

 

そんな注目市場の一つである産業医ですが、最初から産業医になった医師など、殆どいません。医師にとって産業医とは、これまでのキャリアに加えたり、別の道として模索するといった市場です。そんな時、未知の世界で暗中模索をするのは得策ではありません。産業医の求人を抱え、その市場に明るい転職エージェントに相談する事を、強くお勧めします。しかし、産業医市場はそのニーズの新しさからか、転職エージェントによる得手不得手が明確に分かれる所です。

 

医師の転職の成功は、転職エージェント選択時に決まっていると言っても過言ではありません。ドクターが産業医として新たな道を闊歩できるよう、当研究所がお勧めする優良なエージェントへのコンタクトを、心からお勧めします。

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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